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--遥か遠い昔の話。
この国の錬金術の基本方程式が確立した頃の話。
『ぶんかい…さいこうちく…こうちくしき』
「Aー、ご飯よ…って、またそんな本読んで…」
『お母さん！』
「…よくこんな難しいものが分かるわね…」
『なんとなく…いけないことだった？』
「…いえ、とっても凄いわ！自慢の娘よ」
『えへへ、やったー！ご飯ご飯！』
私の家族は、ごく一般的な普通の家族だった。
私に兄弟はいなくて一人娘だったけれど、お父さんがいて、お母さんがいて。
裕福とは言えなかったけど、毎日ご飯がある。家族がいる。
本当に普通の家だった。
『お父さん！ただいまー！』
「おお、お帰り。また図書館に行っていたのか？」
『うん、れんきんじゅつの本読んできた！』
「錬金術…はは、凄いなあ、Aは。あんな難しいのが判るのか？」
『なんとなく！』
その頃は、錬金術というものの存在は少しずつ知られていたものの、まだあまり一般人には馴染み深くはなかった。
中には怪しい術だとして敬遠する者も少なくなかった。
それでも、両親は錬金術を必死に勉強する私を受け入れてくれた。
ただ彼らが褒めてくれるのが嬉しかった。
ガシャーン！
「っ…」
「大丈夫か！？」
「え、ええ…でも、皿が割れてしまったわ…」
『……』
母親は割れた破片を集める。
そのまま捨てようとしたところで、私は母親を引き止めた。
「危ないわよ、A…」
『だいじょうぶ、それ、まだ捨てないで』
「え？」
チョークで床に錬成陣を描く。
見慣れない円の模様に、両親はただ頭に？を浮かべていた。
『おさら、おいて！…いくよ？』
ぺた、と錬成陣に手を着ける。
稲妻のような光が走り始めて、ドン！と光が陣から弾けた。
「…これが、錬金術…」
『えへへー！おさら、なおったよ！』
「ありがとう、A…っ！本当に凄いわ！」
光が晴れた後にあったのは、割れる前に復元された皿だった。
--この時の私は、まだ9歳の子供だった。
それから五年の月日が流れ、私は14歳になった。
『…なんで？どうして…』
市場での買い物から戻ってきた私の腕から、ぼとり、と紙袋が落ちた。
林檎は転がり、トマトは潰れ、べちゃりと音がして紅色が広がる。
熱い。
悲鳴。
黒煙。
--私の、大切な家は、ごうごうと燃え盛っていた。
『…っ、あああああああ！！！！！！』
14歳の時。私は愛する人達を失った。
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キース - 更新頑張って下さい！とても面白くて大好きです！ (2020年10月21日 21時) (
レス) id: 7e1a44873b (このIDを非表示/違反報告)
アギト - そういえば、idって同じ数字にもなるんだね。 (2019年7月23日 10時) (レス) id: ef60878955 (このIDを非表示/違反報告)
アギト - 日向さんこんちゃーす。私もこの作品の続きが気になって確認してました。 (2019年7月23日 9時) (レス) id: ef60878955 (このIDを非表示/違反報告)
日向クロ - 続きが見たいです。心から！！ (2019年6月21日 17時) (レス) id: 24db1a3b4c (このIDを非表示/違反報告)
日向クロ - これ取っても面白いですね。ときどき探してみています。ちなみに私も作品をいろいろ書いています。 (2019年6月16日 15時) (レス) id: 24db1a3b4c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：神菜 | 作成日時：2019年1月31日 19時
