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がたんがたん、と特有の音と揺れを出しながら走る汽車。
車窓に代わる代わる映っていく景色を眺めながら、私ははあと息をついた。
『(…何か面白いことがあるといいけどな)』
窓から入る風が、私の髪をふわりと揺らす。
隣の席には誰もいない。
--一人で、たった一人で。
ただ私は只管に、この世界を眺めてきた。
ある"呪い"を抱えたまま。
おもむろに懐に手を伸ばす。
白色のコートの内側、胸ポケットから手を出すと、ちゃら、という音とともに鎖の着いた銀時計が出てきた。
軍の紋章に六芒星。
"国家錬金術師"というものの証。
『(この"特権"のお陰で、生活に困らないのは助かるけど。)』
今更こんなことを考えても仕方ないか--
また溜息を零して、私は時計をポケットに戻した。
--彼女の名は、A・スフェイン。
国家錬金術師であり、銘は"翡翠"。
乃ち、翡翠の錬金術師と呼ばれる少女である。
翡翠の錬金術師と鋼の錬金術師。
彼女らがその場に居合わせたのは、偶然か、それとも…
***
「乗っ取られたのはニューオプティン発、特急○四八四○便。東部過激派『青の団』による犯行です。」
「声明は?」
「気合い入ったのが来てますよ、読みますか?」
「いや、いい。どうせ軍部の悪口に決まっている」
「ごもっとも」
部屋のドアを開けながら、二人の男女が入ってくる。
「ここはひとつ、将軍閣下には尊い犠牲になつていただいてさっさと事件を片付ける方向で…」
「バカ言わないでくださいよ、大佐。乗客名簿あがりました」
うーん、と考える素振りを見せる"大佐"に対して、部下と思しき者がさっと印刷紙を渡した。
それを見ながら彼はまた頭を抱える。
そして何かに気づいて--にやり、と笑みを浮かべた。
「ああ諸君、今日は思ったより早く帰れそうだ…」
「鋼の錬金術師と翡翠の錬金術師が乗っている」
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キース - 更新頑張って下さい!とても面白くて大好きです! (2020年10月21日 21時) (レス) id: 7e1a44873b (このIDを非表示/違反報告)
アギト - そういえば、idって同じ数字にもなるんだね。 (2019年7月23日 10時) (レス) id: ef60878955 (このIDを非表示/違反報告)
アギト - 日向さんこんちゃーす。私もこの作品の続きが気になって確認してました。 (2019年7月23日 9時) (レス) id: ef60878955 (このIDを非表示/違反報告)
日向クロ - 続きが見たいです。心から!! (2019年6月21日 17時) (レス) id: 24db1a3b4c (このIDを非表示/違反報告)
日向クロ - これ取っても面白いですね。ときどき探してみています。ちなみに私も作品をいろいろ書いています。 (2019年6月16日 15時) (レス) id: 24db1a3b4c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:神菜 | 作成日時:2019年1月31日 19時