粟田口の姉 (ページ25)

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二十話白雪side ページ25

お昼ごはんは、結論から言うと胸焼けした。

「うむぅ……」

顕現したての刀は『持ち方箸』なるものを使うのがここの決まりごとらしく、私も箸に指を引っかける輪っかの付いたものを使って初めての食事に臨んだ。やっぱり見てるのと実際に使うのは大分違うみたい。難しい。

私を囲むように座った伊達の刀達に教えてもらいながら豚カツを食べたんだけど、これがビックリするくらい美味しくて語彙力が死んでしまった。

夢中で食べてると、鶴さんがなんだか機嫌良さげに「旨いか？良かったなぁ！」と頭を撫でてくれた。そんなに子供っぽかったですかね。遺憾の意です。

とにかく初めての食事でテンションが高かった私はひたすら無言で食べ続け、途中から胸焼けに襲われて一人前完食出来なかった。

残してしまったご飯は先に食べ終わっていた太鼓鐘君が物欲しそうに見てきたからそっとお膳ごとトレードした。

もちろんしっかり交換するところを見られていたので光忠に謝りました。折角作ってくれたのにごめんね。

「雪ちゃん初めての食事が豚カツだったもんね……僕も配慮が足りなかったよ」

夜ご飯はあっさりしたものにするね！と逆に謝られてしまい申し訳なさ倍増した。

という訳で早めに大広間から退出して部屋に戻ってきた。一緒に食べた伊達の刀達はおかわりしてたので鶴さんに一言伝えてからそろっと抜け出してきた感じ。

廊下を歩きながらお腹をさすってみる。うん、もったりする……。

部屋に戻ったら内番服に着替えてちょっと横になろうかな。てか着替え忘れてた。一期のことしか考えなかったから……。

少し休憩したら、庭の散策でもしようかな。

「ゆき姉」

ぼんやりそんなことを考えながら歩いていたら、後ろから懐かしい呼び名で呼ばれた。

弟だ。

振り向くと、少し緊張したように頬が蒸気した短刀がそこにいた。

「今、時間あるか？」