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何度も同じコールが流れる。
その回数が増えていく。
………出ないかな
おやすみって言ってたし、
もう寝ちゃったかな
不安が募る。
出ない。
諦めてスマホを耳から離しかけたその時、
『……はい』
眠そうな声がした。
｢喜矢武さん？｣
『こんな時間になんだよ高山……』
いつものようにだるそうな声。
眠気が混じっているのか、その声はいつもよりふわふわしている気がする。
｢ごめんなさい、今何してた？｣
『……外で煙草吸ってた』
だから出るのが遅かったのか、と納得と同時に安心した。
『で？なんか用でもあるのか？』
｢いや、用は特にないんだけどさ…｣
『はぁ？なんだよそれ』
電話越しに笑っている声が聞こえた。
｢うん、ごめん、おやすみなさい｣
『おう』
それだけ。
その一言だけ。
また少しだけ寂しくなって、電話を切ろうとした。
『あ、ちょっと待って』
また聞こえた喜矢武さんの声。
｢ん？なに？｣
『えー……っと、あのさあ、』
｢うん｣
『誕生日おめでとう』
『これからもよろしく……な？』
さっきよりも小さい声だった。
電話越しでも喜矢武さんの照れている顔が浮かんだ。
｢……え？ごめん、よく聞こえなかった｣
『は、はぁぁん！？ちゃんと聞いとけよ馬！』
｢ごめんごめん、もう一回お願いしまーす｣
『だ、だから…』
｢うん｣
『………ハッピーターン、』
｢あははっ、なにそれー｣
僕が笑うと喜矢武さんは焦ったような口ぶりで、
『う、うるせえ！早く寝ろ！』
｢はーい｣
『おやすみ！』
一方的に通話を切られてしまった。
ああ
嬉しい。
やっぱり喜矢武さんは素直じゃないな。
気がついたら、もう三十代になって二日目が始まっていた。
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作者名：reue | 作成日時：2015年8月31日 1時
