続 ページ3
「着きました!ここが我が家です!」
暫く獣道を進むと、立派な屋敷が見えた。
多分、長い間ここにいたのだろう。
改装した跡がたくさんある。
「………趣が、あるな。」
「ありがとうございます!
お父様、お母様、桜太!帰ったよー!」
世界の話を聞いているのかいないのか。
下駄を脱ぎ捨て、玄関の引き戸を開く。
静まり返る家の中。
世界に嫌な予感が過ぎる。
「お父様?お母様?桜太ー?
どこー?薬売りに行っちゃったのかな…」
家の中からAの独り言が聞こえる。
世界は家の中に入り、手当たり次第に部屋を開けて行った。
「………A、来るな」
寝室の襖を開くと、世界は口を開いた。
Aは動きを止めて、世界の方を見る。
「え?なんでですか?何かあったんですか?」
「来るなと言っている。」
世界の声には、明らかな悲しみと怒りが含まれていた。
Aは後ずさりし、玄関へ歩いていった。
「……………え」
玄関へ繋がる廊下の床をふと見てみると、弟の桜太の着物が落ちていた。
血だらけで。
着物を抱えて世界のもとへ走る。
「世界さんっ!!!ねぇ、世界さん!!どうしよう、桜太が危険な目にあっているかもしれな」
Aの目に入ったのは、死体を悼む世界だった。
ただの死体じゃない。
Aにショックを植え付けたのは、その死体が、Aの最愛の家族だったことだった。
手を合わせ終わると、世界は呟いた。
「………。
これは、鬼の仕業だ。」
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作者名:いふらいと | 作成日時:2023年5月14日 19時