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ページ18

「た、ただいま戻りました〜…」

恐る恐る扉を開ける。

しんらい。

あの蜜璃さんの言葉と師範を信じて、僕は家に帰ることにした。
そもそも家はここしか無いのだから帰る以外選択肢が無いのだが。

「…ん、おかえり、A。
甘露寺の屋敷に行ったんだってな。どうだった?」

世界は縁側で日向ぼっこをしていた。
こちらを優しく見つめている。

意を決して、Aは口を開いた。

「…師範、あなたは…僕を信頼しているから、引退を決めたんですよね
僕は、その師範の意志を、伝えてくれた甘露寺さんの言葉を…信じます。」

世界は驚いて目を見開いた。
その後すぐに頷き、こちらに歩み寄る。

「ありがとう、ごめんな…A。
……頑張れよ、空柱代理」

肩をポンと叩かれ、抱きしめられた。

人からの抱擁は、いつぶりだろうか。
しばらく、僕はその暖かい感覚を味わっていた。


数日後。

ドンドン!

勢いよく扉が叩かれた。
師範は小走りで確認しに行く。
まあ、この屋敷は藤の花で守られているから鬼の心配はないのだけど。

「A、刀鍛冶さんだ」
「は、は〜い!」

刀鍛冶。
鬼殺隊では、一人一人担当の刀鍛冶がつく。
僕の担当さん、どんな人かな〜

「は、はじめまして…」

扉を開けると、傘に鈴をつけた男性がいた。
顔を上げると、お面が見える。
この人は…翁のお面をつけている。

「はじめまして、お坊ちゃん。
私、藤原春と申します。」

そう言って、春は名刺のように掘られた鉄の板を差し出した。

「晴継様を担当できることを心待ちにしておりました。
300年前からお姿が変わりませんね。流石は遺伝」
「あ、ありがとうございます…?」

変な言葉を口走る刀鍛冶。
もしかしてこの人、ヤバイ系…?

「もういいだろう、春
刀を見せてやれ」
「了解いたしました」

知り合いなのか、タメ口の世界。
いそいそと春は刀を取り出す。

「さあさあ、持ってみてください…!」

何故か、昔からこうしてきたかのようにAは刀に手を伸ばした。
緊張はしない。ただ『当たり前』だった。

「………黒い」
「黒いな」
「うわ、黒」

まず最初に口を開いたのは春だった。
黒い。
Aの刀は黒であった。

第7話 柱代理→←続



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作者名:いふらいと | 作成日時:2023年5月14日 19時

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