A broken mind

episode 18 ページ19

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朝見邸は朝から揉めていた。


よしえ「悪いようにはしないから、今日は学校を休みなさい」





言い聞かせるように話すよしえですが、Aは耳を傾けることなく、髪をセットし、ピアスをつける。




貴「無理だよ。来週から考査入るし、休んでられない」






Aは昨日午前で早退した。




それにより午後からの家庭科の授業を受けれていないのだ。





今回のテストには家庭科が入る。




筆記だけでなく、実技も試される家庭科のテストはただでさえ厄介だと言うのに、今回の内容はAが大の苦手と言う裁縫。






課題である縫い方や玉留め以前に、針に糸を通す事すら何十分も掛かるAに余裕はない。





そのため、今日は放課後友人である三ツ谷と合流して家にお邪魔し、裁縫を教えてもらうことになっていた。





学校まで迎えに来てくれると、三ツ谷が言ってくれた手前、体調不良でもないのに休んで、忙しい合間を縫って教えてくれると言った三ツ谷の優しさを無下にすることは絶対にしてはいけない。





今になって行かないと言って彼に迷惑をかけるなど、言語道断だった。







しかし、そんな事を微塵も知らない(知っていたとしても止めただろう)よしえは尚もAを引き留めようとした。







自分の娘たちの仇かもしれない佐藤杏奈がAと同じ学校、同じクラスにいると確信した以上、わかっていながら同じ空間に行かせることは不安でしかない。






けれども、Aの言うテストの重要性も分かっている。





良い高校に入って、良い大学に進んで、良い仕事に就き、ゆくゆくは結婚して家を守る。




そんな当たり前の幸せを過ごす為にはこのテストこそ無下にしてはいけない。




どんなにグレても、学校に行くこと、テストだけはしっかりやること、それを約束させたのはよしえだ。






しかし今は、最悪命の危険がある。





佐藤杏奈がAを狙っているかもしれない以上、安心はできない。



ふと、昨日の鬼灯の言葉が蘇る。




“「ワシと一緒に高知に来い」”


突拍子もない。初めはそう思ったが、今はそれが最善のようにも思える。


自分は東京を離れる訳には行かない。
でもせめて、Aだけでも･･･。



堂々巡りで痛む頭をよしえはそっと抑えた。




よしえ「･･･これからしばらくは、絶対に一人になってはいけませんよ」




今はただ、Aの無事を願って。

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