3 安田side ページ10
「ずっと預かってたんです。いい加減、返さなと思って」
これは海斗が事故にあう二週間ほど前に、俺の家に遊びに来とったあいつが忘れていったもの。
ほんまは誕生日会の時に返そう思ってた。
あいつの大事なもんやのに。
母「懐かしいですねぇ、あの子いつも持っとったわぁ」
「ほんまに申し訳ないです。」
母「謝らんでいいですよ、何も」
おばさんはそう言いながらぺらぺらとスケッチブックをめくっていく。
母「こんなんかいとったんかぁ、あの子...あれ、」
おばさんはあるページを見て止まった。
そして驚いたような顔をして僕のほうを見て
母「章大くん、これは中身見はりました？」
「え...よくは見てませんけど、どうかしたんですか？」
母「いや、ほんならいいんです」
そういうとぱたんとスケッチブックを閉じてしまった。
どうしてそれを聞いたのかも、“そのページ”にいったい何がかかれていたのかも、
それを見てないことに対してなぜいいと言ったのかも全く分らんかった。
ただ一つだけわかるのは、それらを知ったところで自分は何も救われやしないということ。
生きていた海斗の描いた絵を見ただけでも罪悪感に押しつぶされそうになるのに。
ずっと持っていたにもかかわらずそのスケッチブックの中身をみることはできんかった。
「おばさん、僕は今でも罪悪感でいっぱいなんです」
母「やっぱり今もそうなんか、」
「おばさんは僕のせいじゃないって言ってくれはりますけど、それでも僕のせいだと思ってるんです」
母「そうか、」
「このままアイドルなんて続けてられへんくて。いい加減けじめつけよ思ってます」
母「章大くん...」
「たぶん、これが最後です。ほんまに今までお世話になりました。罪はしっかり償います。おばさんは、元気に生きてください」
母「いったい何を...」
「ではこの辺で失礼いたします。」
おばさんに深く聞かれるのを防ぐために、立ち上がって椅子の隣に立ち、礼をする。
自分がやろうとしてることをおばさんに言えば
やめたほうがええって言われるのは目に見えてるから。
母「また来てください、絶対」
「来れたらきます、」
絶対という言葉に心が痛む。
きっと俺はもう二度とここを訪れることはないだろうと確信していた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 312人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
お茶。(プロフ) - kafwerateさん» 初めまして、素敵なコメント本当にありがとうございます...!自分の文章をその様に受け取っていただいて、本当に嬉しいです(TT)お返事が遅くなってしまって申し訳ないです(TT) (2020年12月9日 16時) (
レス) id: 9de1274b8c (このIDを非表示/違反報告)
kafwerate(プロフ) - はじめまして、1年くらい前のものと思われますが完結お疲れ様です。ふとこの話に出会ってノンストップで最後まで読んでしまいました。途中から涙で顔ぐしゃぐしゃになりながら読んでました笑 もう本当に感動しました。この話に出会えて良かったです。突然失礼しました。 (2020年8月13日 1時) (レス) id: 7243bdd22a (このIDを非表示/違反報告)
お茶。(プロフ) - ふわぽむさん» なんて嬉しいお言葉でしょうか(TT)本当にありがとうございます。文章力をもっと上げて、もっと素晴らしい作品がかけるように頑張ります！ (2019年7月20日 23時) (レス) id: 388165f169 (このIDを非表示/違反報告)
ふわぽむ(プロフ) - 完結お疲れ様でした！正直最初は妄想の延長線で拝見したこの作品に、どんどん引き込まれていきました。ヤスくんのお話じゃなくても面白いだろうけど、お茶。さんの描くヤスくんだからこそこんなに素敵な作品になられたんだと痛感しております。おまけ楽しみしてます♪ (2019年7月20日 22時) (レス) id: 5ff2bede50 (このIDを非表示/違反報告)
お茶。(プロフ) - てばさん» ありがとうございます！暫く放置しててごめんなさい(TT) (2019年6月16日 18時) (レス) id: 388165f169 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：お茶。 | 作成日時：2019年3月11日 1時
