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空いた口が塞がらない、という表現が最も正しいであろう。なんて言った？
先ほどの不機嫌極まりない顔は消え去り、また優しくない顔に戻っている。優しいというよりは意地悪な感じで、例えるならば悪魔の微笑みといった言葉で形容されるような笑顔に私は顔をひきつらせた。
「ちょっと、本当に自分が何言ってるか分かってるの？」
「どうせ俺のこと頭おかしいやつとでも思ってるんでしょ。本気だよ。」
「…ジェミン、優しすぎるのもよくないよ」
「話逸らさないで」
宇宙を詰め込んだみたいな瞳が、じっとこちらを見つめている。ハイライトを仕込んでいるかのような煌めきは目をそらしたくなるほど眩しく見えた。
私はただ黙っていることしかできなかった。今、彼にどんな言葉を返すのが正解なのか全く答えがでない。
このルーズリーフの計算式みたいに、○か×かだけわかったらいいのに。
「忘れられるまでの暇つぶしとでも思ったらいい。1人で忘れられない気持ちを抱えるよりは気が紛れるよ、きっと。どう？」
そんな、「どう？」って聞かれても。明日買い物行こう！みたいな感覚で話す内容じゃないのに。頭をぐるぐると回転させて、突然出てきたジェミンと過ごす日々を想像する。
・・・あれ、もしかして今までと大して変わらない？今までも何となく一緒に居ることが多かった、な。
「今ここで1回だけ頷いてくれたら、Aがテヨン先生を忘れる手伝いする。」
頭の中に、あの無駄にセンスのいいシルバーリングが浮かんだ。
綺麗だった。あんなものには敵わない。せめて一言言えたら良かったのに、社会はそんなことも許してくれないんだ。どうして私は恋をしたんだろう。
喉の奥にずっと燻っている言葉が気管を這い上がってくるのに、私は唇を噛み締めて口元で堰き止めているのだ。
「辛くない？ずっと言えないの。苦しいでしょ、だからさっさと忘れよう。一緒に苦しんであげる。」
狡い、羨ましい、辛い、苦しい。
目尻がまたじりじりと熱くなって、視界がぼやける。
「ジェミン…私、最低だ、」
「Aは気に病む必要ないんだよ。」
その言葉に、私はゆっくりと頷いた。
ぼやけた視界の向こう側で、ジェミンがうっすら笑っているような気がした。
『鳴かぬ蛍が身を焦がす』 ジェミン Fin.
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マリン(プロフ) - ころころまんさん» ジェミンを応援したくなるというコメント本当に嬉しいです。最後まで主人公の味方になろうとする彼を書きたかったので……！コメントありがとうございました！ (2021年3月21日 12時) (
レス) id: 2096d89c8f (このIDを非表示/違反報告)
ころころまん(プロフ) - ジェミンの話が一番面白かったです。ドキドキするしジェミンを応援したくなるし、ジェミンっていいやつなんだなぁと私は感じました。また更新お待ちしています。こだわりのある感じがまた最高です。 (2021年3月21日 4時) (レス) id: ddd6b54eb6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：マリン | 作成日時：2021年2月15日 1時
