キミの声で揺らして。 (ページ8)

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06 : Rikuto.Toyoda ページ8

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推しと彼氏は別。

どっちも私にとって必要だし、楽しいことは楽しい。

彼氏の陸人くんが忙しいのもあって

推しのライブツアーを心置きなく楽しんでいる。

特に今日は席が良くてすごく幸せだったから

誰かに話さずにはいられなかった。

「もしもーし」

「あ、陸人くん、いま平気？」

「あぁ今はね、ちょうど部屋で1人になったとこ」

「ゆっくりできてるんだ、いいね」

「ふふ、いいでしょー」

ホテルに着いてひと息つくと

陸人くんに電話をかけた。

元気そうな声で安心する。

「で、最近どうなの？」

「あ、今ねこの前話してたツアー期間で」

「へー、各地飛び回ってんだ？すっごいじゃん」

「へへ、楽しいよ」

本当に、理解ある彼氏で助かる。

いっぱい話を聞いてくれるから

彼には包み隠さず話せる。

聞き上手な陸人くんに甘えて

つい全部、そして長々と語ってしまった。

「でもその分の陸人くんには会えてないね。ごめん」

「俺も最近忙しいからさ

電話だけになっちゃうの本当に寂しいんだけど」

「陸人くん…」

「どうしてくれんだよ！(笑)」

寂しがるのも、おどけてるのも

珍しくてちょっときゅんとする。

いつの間にか頭の中は陸人くんだけになっていた。

「まあでも、声聞けただけでも本当に嬉しいよ」

「...本当？」

「うん」

私もね、と言おうとすると

スマホから通知音が聞これてくる。

…そうだ、友達の推しが誕生日だから

0:00 ぴったりに部屋に集まるんだった。

「ごめん、陸人くん、私呼ばれちゃった」

「…分かった。じゃあ、また」

「うん、また…」

「…そうだ！！」

「ん？」

名残り惜しくもスマホを耳から離そうとすると

引き留めるように響いた声。

もう一度、耳を傾ける。

「次会う時はいっぱいぎゅーってしようね」

「えっ」

「じゃあね！！」

一瞬、幻聴かと思った。

珍しく彼氏っぽいセリフを言ったかと思えば

あっさり電話が切れる。

「ええ…ずるい」

恥ずかしさに顔を手で覆う。

このままじゃ友達に絶対からかわれるから

合流する前に飲み物買うフリしてコンビニへ寄ろう。

火照った顔に手のひらを当てながら

扉を開けて部屋の外へ出た。

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21:52 豊田陸人

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