灰病にならなかった理由 (ページ17)

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｢今日、俺たちの結婚10年目の記念だったな。すっかり遅れちまった…。まだ、俺は1人前じゃねえ。ひとりじゃ全員の面倒なんか見きれねぇ…。まだいてもらわなきゃ困るんだよ……。A…。｣

紺炉の涙が炭化した私の頬に零れ落ちた
素敵な指輪。もうぼやけて少しも見えないけど、日に当たってキラキラと輝いているのがわかる
とても綺麗。

｢……が、と……。｣
(ありがとう。)

もう私に後悔なんてない。
人生で最初で最後の大切な人からの大切な贈り物。

｢っ！！A！！！俺が炭化を治してやる…！！それで、平和になったら蕎麦屋を営んで、お前は菓子を作るのが器用だったよな…っ、2人で店開いて、子供二人だったか……っ、なぁ、頼む……。まだここにいてくれ……。｣

私もだよ。
そばに居たい……。
でも、それはまだ少し先。
あなたがそばに居てくれたから、今の私がある。
ありがとう、紺炉

｢ま………た………………ね｣

私の煤だらけの掌は紺炉の頬に掠るとサラサラと消えていった
終わる
貴方との日々が
終わってしまう
もっともっと一緒にいたかった
紺炉が必死に私の手から崩れ落ちる煤を元に戻そうと集めるけど、炭化は益々酷くなり、崩れ落ちていった

もう、聞こえない
見えない……
でも、感じる…。

貴方がずっと私を抱き寄せてくれている暖かい優しさを