妖が視える少年との出会い４ ページ5
ーーこれは、二人が出会う少し前のことーー
夏目side
「あの〜夏目様でございましょうか〜」
「……はあ」
学校から帰る道の途中、傍の茂みががさりと動き、中から人影が俺の前へ現れた。
思わず、ため息をつく。
俺より少し背の低いそいつは、確かに人の形をしていたが、人とは違ったところがあった。
額にある三つ目の目。
微かに感じる人とは違った気配。
もうすっかり慣れてしまったこの感じ。やはり妖か。
…まあ俺にわざわざ話しかける物好きなんてあまりいないから、わかってたけど。
「…少し場所を変えてもいいか？」
挙動不審にならない程度に、そろりと周囲に人がいないか確認する。…やっぱり山の中へ入った方が良さそうだな。
聞けば、この妖は友人帳に名前が書いてあるらしい。名を返して欲しいとのことだそうだ。
最早日常茶飯事だから、軽く了承する。
…別に今すぐ名を返すことはできる。
しかしここでこの妖と喋っていると、大きな独り言を呟いている変人に見られかねない。
そうなれば、即噂になること間違いなしだ。噂を聞いたらまた周りの人には遠巻きにされてしまうだろう。
……せっかく新しく友人達が出来たのに、皆が離れていってしまうなんて、情けないけど今の俺じゃあ耐えられない。
「じゃあ、山の中へ入ろうか」
「わかりました〜」
三つ目の妖はこくりと頷くと、俺の後に続いて山の中へと向かう。…なんだか随分とふわふわした奴だ。案外人懐こい奴なのかもしれない。
奥の方へと進んでいき、そろそろここら辺でいいかと足を止めた。
人の気配がないことを確認すると、バッグの中から友人帳を取り出す。
深く息を吸い込んだ。
「ーーーー我を守りし者、その名を示せ」
風も吹いていないのに、掲げ持った友人帳がパラパラと捲られる。
その中から、一枚だけピンと立ち上がった紙を破り、口にくわえた。
「ーー三守、君へ返そう。受けてくれ」
ふっと息を吹きかけた。
ーーーー
「本当にありがとうございました〜夏目様〜」
「別にいいさ。俺も名をきちんと返せたのならよかった」
深々と頭を下げる三守に、少し笑みが零れた。
妖達に友人帳の名前を返すのも今ではすっかり慣れて、こうして妖と話すのが少し楽しみな俺がいる。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
三守(みつもり)は架空の妖の名前です。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 309人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「男主」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ゆう(プロフ) - 更新待ってまーす！ (2017年6月5日 0時) (
レス) id: c901a87f20 (このIDを非表示/違反報告)
赤穂(プロフ) - 初心者で不慣れな執筆ゆえ拙い文章ですが、できる限り丁寧に、ご期待に添えるような物語を書いていきたいと思います。これからもよろしくお願いしますm(*_ _)m (2016年12月13日 23時) (レス) id: 3c77e80249 (このIDを非表示/違反報告)
赤穂(プロフ) - Sisselさん» アドバイスもたくさん頂き、本当に感謝しております。自分でも見落としていたミスに気がつくことができました。｢中てられる｣という言葉は、意味がまた違うんですね……汗 (2016年12月13日 23時) (レス) id: 3c77e80249 (このIDを非表示/違反報告)
赤穂(プロフ) - Sisselさん» 感想ありがとうございました。初めての投稿作品をこんなにも評価して貰えるとは思わず、今とても驚いております…( ﾟдﾟ)ﾎﾟｶｰﾝ (2016年12月13日 23時) (レス) id: 3c77e80249 (このIDを非表示/違反報告)
赤穂(プロフ) - ゆうさん» ありがとうございます！自分でもびっくりで…更新楽しみにしてくださってて、嬉しいです〜 (2016年10月14日 1時) (レス) id: 9295142d7c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：赤穂 | 作成日時：2016年4月3日 2時
