とある休日の過ごし方６(終) ページ27
宴もたけなわとなってきた頃、僕と夏目君は妖の輪から外れて少し離れたところで夕日を眺めていた。
｢俺さ、今日ここに来て良かったって思ってるんだ｣
ゆったりとした空気が流れる中、ふいに夏目君がポツリと呟いた。
その静かな言葉に、僕は何も言わずに耳を傾ける。
｢田沼に出会って、Aに出会って、俺は嬉しかった。独りぼっちで辛かった心が救われた気がしてさ｣
それは彼の独白だった。
きっと、心の奥底に眠っていたはずの感情。
閉じ込めておくことしかできなかったはずの気持ち。
｢なんだか、どうしても実感がわかないんだ。これは俺が勝手に作り上げた妄想なんじゃないかってさ｣
彼は目を細めて遠くを見つめたけれど、そこに悲壮感はない。とても穏やかだった。
｢でもそれも、ここで妖達と宴なんてやってるA見てたら吹っ飛んだよ｣
どうやら答えは見つかったようだ。
｢"こういうこと"を人と共有できたのは初めてだ｣
｢ふふ、"話し相手"になってほしいって言ったじゃないですか｣
奇妙で愉快な仲間達によって、人知れず山の中で行われるお祭り騒ぎ。
それを知るのはここにいる二人だけ。
なんて素晴らしいことなんだろうか。
｢一つ、君との思い出ができましたね｣
そう言って夏目君を振り返れば、彼は花が咲くように顔を綻ばせ、それから皆の方へ視線をやった。
彼の瞳に映る不思議な色彩に、僕は少しの間だけ見惚れていた。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
これにて、この章は終了となります。ちょっとした小話として書かせて頂きました。次辺りからはそろそろあの祓い屋が出てくるかも…？
長い間更新停止していましたが、そろそろ私生活の方も落ち着いてきたので再開いたしました。
待っていて下さった方々には心から御礼を。
そして今後とも、この小説を宜しくお願いします。
(更新までに時間が空くため文体が所々変わっていたりしますがスルーして頂けるとありがたいです…m(_ _)m)
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 309人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「男主」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ゆう(プロフ) - 更新待ってまーす！ (2017年6月5日 0時) (
レス) id: c901a87f20 (このIDを非表示/違反報告)
赤穂(プロフ) - 初心者で不慣れな執筆ゆえ拙い文章ですが、できる限り丁寧に、ご期待に添えるような物語を書いていきたいと思います。これからもよろしくお願いしますm(*_ _)m (2016年12月13日 23時) (レス) id: 3c77e80249 (このIDを非表示/違反報告)
赤穂(プロフ) - Sisselさん» アドバイスもたくさん頂き、本当に感謝しております。自分でも見落としていたミスに気がつくことができました。｢中てられる｣という言葉は、意味がまた違うんですね……汗 (2016年12月13日 23時) (レス) id: 3c77e80249 (このIDを非表示/違反報告)
赤穂(プロフ) - Sisselさん» 感想ありがとうございました。初めての投稿作品をこんなにも評価して貰えるとは思わず、今とても驚いております…( ﾟдﾟ)ﾎﾟｶｰﾝ (2016年12月13日 23時) (レス) id: 3c77e80249 (このIDを非表示/違反報告)
赤穂(プロフ) - ゆうさん» ありがとうございます！自分でもびっくりで…更新楽しみにしてくださってて、嬉しいです〜 (2016年10月14日 1時) (レス) id: 9295142d7c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：赤穂 | 作成日時：2016年4月3日 2時
