花の名前 ページ1
「え？ なにこれ」
いつも通りのグループ仕事中。俺は瞬きを何度か繰り返す。けれどその状況はなんら変わり映えせず、事実としてそこにあり、ちっともそれは夢だから目覚めたら何事も無かったように元通りとはいかないらしい。ぶんぶんと頭を振ってみた。変わらない。目を擦ってみて、見開いてみる。同じく変わらない。
まじでなんだこれ。どうなってんだ俺。
「たかき？ どうした？」
「いや、えっと、その、何でもない」
「全然何でもなさそうに見えないんだけど」
肩が上がるその特徴的な笑い方をする彼の周りにはどうしてか綺麗な青い花が美しく広がって見える。その花はよく見ると少し紫がかってもいて、まだつぼみのようだ。咲いてはいないのにこの時点で何だかもういい香りもするけれど、それが伊野尾くん自身からなのか花からなのか俺には分からない。近付いてみればいいのかも知れない。でも匂いを嗅がせてくれなんてとてもじゃないけど言えない。
他のメンバーには花は見えず、伊野尾くんだけにあるようだった。
俺、疲れてんのかな。確かにここ最近忙しくていつもより睡眠時間が不足しているのは間違いない。けれどだからってこんなことあり得ないだろ。人の後ろに花浮かんで見えるなんて。
「うーん」
「だからどうしたのって」
先程からずっと唸りっぱなしの俺を伊野尾くんが心配そうな顔で見つめてくれている。気が付けばメンバーみんなが俺のことを囲んでいた。
「えっ？ なに？」
「何はこっちのセリフだって」
「さっきからうんうん唸ってるし」
「そうそう。まあお腹痛いってことはなさそうだね」
そう言いながらぽんぽんと俺のお腹を知念が軽く叩くと、有岡くんは背中を撫でてくれ、光くんは胃薬は持っとけと渡してくれた。
「雄也」
「ん？」
「もしかして……」
「いや、何でもない」
「薮くん？」
薮くんは腕を組みながら首を捻っている。その後ろで裕翔と山田が「まあなんかあったら話してね」と言ってくれた。
でもさ、これ、軽く話せることじゃないよなあ。このやり取りをしてる間も伊野尾くんの後ろにはずっと花がある。
「ふへっ。変なたかきー」
ふんわり笑う伊野尾くんを見つめながらまさかその本人のことで考え込んでいるとは目の前の人物はこれっぽっちも思っていないだろう。
「ん？ マイクに低い音が……。誰か唸ってます？」
「雄也だよ！」
俺は結局この日ずっとうんうん言いながら仕事をし続けた。みんなごめん。
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ruki(プロフ) - chocoさん» chocoさん、コメントありがとうございます！そんな風に言って頂けてとっても嬉しいです☺️本当にお花が見えたら2人ともずっときれいな花を咲かせて、周りに飛ばしてるかもしれません笑 まだもう少し続くので良かったらお付き合いくださいませ🥰 (7月6日 18時) (
レス) id: aad90071ba (このIDを非表示/違反報告)
choco(プロフ) - このお話めちゃくちゃ好きです🫶�睫擇気鵑頬�められてブワッて花が咲く所で伊野尾さんがどんな顔するのか目に浮かんじゃいました！その後お花萎えちゃうのに何でもない顔する所も。これからたかいのを見たら見えないお花が見えてきそうです。 (7月6日 5時) (レス) id: a8ac698638 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ruki | 作成日時：2023年5月15日 12時
