無知の怖さ。 ページ7
「うーん、原因不明の意識障害は厄介だね。」
「…リヴァイにも言われたわ。」
「何か心当たりないの？自分でも気づかないうちに色々と原因は隠れているものだよ、なんでもいい、今自分が思ってる事、ぜーんぶ私にぶちまけてみて。」
思ってる事……。ハンジは難しい顔をしたあと、どん、と胸を叩き両手を広げた。その横でリヴァイが私の心境を探るかのようにして鋭い眼光を向ける。
何か、思ってる事、些細なことでもいい、私が……思ってる事、それは、
「…地下牢から出してもらってこんな事を言うのは本当に申し訳ないんだけど、」
「うん、いいよいいよ、ほら言って。」
「……私は人間ではないと思う、どちらかと言えば巨人…に近い存在なのかもしれない。」
「っ、え……？」
ハンジが眼鏡を外し私の顔を覗き込む。その目は心做しかキラキラとしていて、まるで好奇心を向けられているようだ。
「……ハンジ？何、その目は……、」
「やっぱりルイって不思議だ！実に興味深い！って事でルイの体を隅々まで解剖させてくれ！！！！」
「…はぁ？嫌よ、ふざけないで。」
あまりの爆弾発言にわたしの頬が引き攣る。真剣な話をしていたというのに見事にぶち壊しじゃないか。
ハンジが分かりやすく肩を落とし、頭を項垂れさせた。「酷いよ。」と泣き真似をするハンジを冷めた目で見ていたリヴァイは不意に私に視線を向け、形のいい口を開く。
「糞眼鏡の事は放っておけ、でさっきの話の続きだが何故そう思う？お前はエレンと同様、巨人化するのか？」
「そういう訳じゃないわ、リヴァイ。私は自分が何者なのかも分かっていない、この世界は巨人に対してなんの知識も持っていない、つまり無知よ。それと同時に私は自分の事すらも知らない、分からない。不可解過ぎるのよ、何もかもが計算された出来事のように感じて仕方が無いの。私は私が怖い、怖くて堪らない。何者なんだろうって考える度、頭が真っ白になる。」
自分の掌を見下ろした、大袈裟な程に震える体を抱き締める。きっと今の私は酷い顔してると思う。
自分が誰なのか分からないなんて、そんなのおかしい。記憶が無い、それは予想以上に私を苦しめた。
泣き真似をしていたハンジが悲しそうな目で私を見る。そんな顔をしないで、と言いたいところだが今の私が言ったところで説得力はまるでないだろう。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 19人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：るかこ。 | 作成日時：2020年4月15日 11時
