深淵の中で手を差し伸べて。:h【リヴァイ】 (ページ3)

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「リヴァイ兵士長は不器用、なんですか？」

「……は？」

「ほら、だってあたしに掛けてくれる言葉はどれも優しいです。言い方はキツイけれど。」

「…お前、巨人と対面して頭のネジでも緩んだか？」

真顔で失礼な事を述べるリヴァイ兵士長に自然と唇が尖る。

「…リヴァイ兵士長、それは本当に失礼ですっ。」

「……今日はよく俺に絡んでくるな、お前。」

「疲れてるんですよ、多分…。だって昨日もあまり眠れていなかったから。」

ああ、そうか。そうだった。昨日、こいつはずっと看病し回っていた気がする。見様見真似で調合した薬草をひたすら作り、愛想振りまきながら薬草を配っていた。ガキの目の下には大きな隈が浮かび上がっていて、無意識にソレに手を伸ばした。

不思議そうに俺の指を目で追うガキに自然と頬が緩み、デコピンを食らわす。勿論、加減はした。目の前で額を抑えながら瞬きを繰り返すガキは俺の愛馬に揺られながら唖然としていた。

「相変わらず、百面相だな。」

「リヴァイ兵士長はいつも行動が唐突なんですよっ。」

「そうなのか？」

「はい、とても。」

他愛もない会話を繰り広げながらやっと兵舎に辿り着いた。2日ぶりの兵舎に背伸びをした兵達はリヴァイとエルヴィン、ハンジに挨拶をして各自室へと戻っていく。

ジゼルはどうしたらいいのだろう、と挙動不審になりながらもリヴァイを見て、そしてエルヴィンを見る。エルヴィンはジゼルの視線に気づくと柔らかく、だけど疲れを乗せた笑みでジゼルの頭に手を置いた。

「疲れただろう、今日はもう休みなさい。」

「はい、えっと…エルヴィン団長達は？」

「私達はまだまだ仕事が残っている。何せ報告書を王政に提出しなくてはならないからね。」

「でも休まれた方が、」

「いや、慣れてるよ。ありがとう。ではジゼル、ゆっくり体を温めて寝なさい。また明日。」

「……はい、おやすみなさい。」

エルヴィンの手が離れたと同時にエルヴィンは難しい面持ちで顎に手を当てジゼルに背中を向けた。

リヴァイとハンジは山積みであるだろう書類を脳裏に掠め、リヴァイは舌打ちを、ハンジはよくわからない叫び声を上げて嫌々とエルヴィンの後ろを着いて言った。その後ろ姿を見送っていれば、不意にリヴァイが振り返る。