君は蜜柑私は芋虫 (ページ3)

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横顔と雨ページ3

どう考えても彼は完璧だ。

出会った時から。

こんなどこにでもいそうな、落ちこぼれの私と彼が出会ったのは多分きっと、運命だった。

撮影中の、雨の中傘もささずに歩く彼はとても綺麗な横顔だと思った。

私の(現時点唯一)作品がドラマ化すると言うので現場に足を運んだ。
5年前の大して売れもしなかった新人賞を取っただけの作品をドラマ化だなんて…少しバカなのかと思いながら監督に呼ばれたので撮影現場にしぶしぶ足を運んだ。

そこにいた彼は、私の想像していたより遥かに色っぽくてかっこいい主人公に息を飲んだ。

「あの…彼は誰ですか？」

｢彼、関ジャニ∞の丸山隆平さんです。この役ピッタリだと思ったんですよね｣

｢えぇ……とても…ピッタリです……｣

それはまるで、一目惚れだった。

帰ってから何度も調べ、曲を聴き、初めて恋を知った子供かのように彼のことを考えた。

でも、私には到底手の届かない高嶺の花だ。

思えば思うほど気持ちというものは募っていく。

もう一度会いたい。

少し話をしてみたい。

どこか底抜けの明るさの中に闇を秘めたような、彼にどんどん気になっていく。

…

｢あのっ……作者さんですよね？｣

出版社への持ち込みに全滅し、途方に暮れた帰り道で誰かに声をかけられた。
顔を上げると、彼だった。

｢へ……？｣

いかにも間抜けな声を出して彼の顔を見つめた。

｢あのー…この前、撮影見に来てくださってましたよね？僕、挨拶出来んかったから…あっ、にしても偶然ですね？こんなことろで会えるなんて！いやーほんとに挨拶出来て良かったです。」

｢…あっ、いえ……その…私も、挨拶出来ずにごめんなさい……｣

突然の彼への戸惑いが隠せなかった私は、恥ずかしくて彼の顔を見れなかった…
とても嬉しくて、なんだか忘れていたものを思い出させてくれたような気がした。

彼は少しの沈黙の後に私を食事に誘い、たわいもない話をして連絡先を交換して食事代とタクシー代までを出して帰って行った。

そこから連絡を取り始め、何度かご飯にも行き、デートもしてライブにも呼んでもらった。

そんなふたりが恋(？)に落ちるのは簡単だった。

幸せに出来ないかもしれない、それでもAちゃんと一緒に居たい

と彼は言った。

それが私達の始まり。