【鬼滅の刃】しあわせにしてあげる。【短編集】

※ ページ7

＿＿＿＿＿2日目｡


先程から何度か助けを求めている。誰に?…名前こそ言わないが、誰かに。

助けて。というAの声はとてもか細くて。…なんだか背中がゾクゾクした。

Aが自分の家にいるという背徳感が堪らなかった。笑みさえ浮かんできた。


『…大丈夫。大丈夫だA。まだまだ時間はあるからゆっくり慣れていこうな』



＿＿＿＿＿3日目。


ガチャガチャと自分の手枷や足枷を外そうとしている。

…外れるわけないのに。だってそれ2重ロックな上に、かなり分厚い鍵なんだぞ。

だから、ね。諦めればいいのに。なんでまだガチャガチャするのだろうか。

しかもAは俺が運んだ食事すらとらない。1口水を飲んだだけ。…なあ、死んでしまうのだけはやめてくれ。

必死で涙さえ浮かべた瞳で、枷を外そうとしている。たまに狂ったように暴れる。自分で自分を傷つけないで。



＿＿＿＿＿4日目。


膝を抱えてめそめそと泣き始めてしまった。

あれ、おかしい。こんなはずじゃなかったのに。

助けてって。たった一言俺の名前を呼んでくれて、そういえばいいのに。なんで?どうしてAは言わないのだ?

ポロポロと泣いていくつもの涙を落としていく。綺麗な涙。


『…A。一言"義勇"って言えば俺がそこにいって、"安心"を与えるのに』


優しく優しく抱きしめてあげる、のに。


泣きやんだと思ったら、疲れたように眠る。それで起きて…泣いて。その繰り返し。

ああ、もう。見てるこちらまで辛くなってきたから。ほら、早く。




＿＿＿＿＿5日目。


布団に蹲って真っ暗な目で静かに泣いている。泣き声すら聞こえなかった。

聞こえるのは布団の擦れる音。それだけ。

まれにうわ言のように何かを小さく呟くが、聞き取れない。俺の名前じゃないことは確かだけれど。



『……なん、で。なんで、なんでなんでなんでなんでだ?????』



どうしてAは俺の名前を呼ばないのだ?どうして俺に助けを求めないのだ?

だって俺はAのそばにいつもいて。Aもそれが幸せそうな顔をしていたじゃないか。

世話焼きなAはいつも俺のそばにいてくれたじゃないか。

確かに俺はAに依存しているところもあったけれど。でもそれは…Aも…同じ……だったよな…??



｢…な…??A…??｣



最後の希望を掴むように、滲む視界でモニターを見る。

すると、Aの口が小さく動いた気がして。





｢…ぎ、ゆ………助け……っ…、｣




＿＿＿＿＿ああ、ほら。やっぱり…♡♡

#愛ゆえの行動だからそれは仕方ないのかもしれないけれど。→←#全てに縋ったのと全てを諦めたのは同時である。

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