【鬼滅の刃】しあわせにしてあげる。【短編集】

#頭の中ではずっとずっと考えている。 ページ13

*tyokoさんリク


｢A。これをやる。……その、気に入ってくれるといいんだが｣


そう言ってAに渡したのは綺麗な簪。

店に行った時、真っ先に目について……Aに間違いなく似合うだろうなあと思って買ったのだ。

ドキドキとする胸を隠しつつ、Aに渡せばAはたちまち嬉しそうな顔をした。


｢わ……!!っわー!!すごい!!可愛いですこれ……!素敵です!!えへへ……ありがとうございます!大切にしますね!｣


可愛いのはAだぞ。ああ本当に愛らしい。

くるくると回りながら喜ぶAは、天使そのもので。

ああ、できることならきゅっと抱きしめて、頭を撫でてやりたい。……まあ、そんな勇気は……ない、のだけれど。

包帯を口元に巻いていて良かった。こんな緩む頬を見られてしまったら、Aはきっと気持ち悪がってしまうだろうから。


ああ、Aってなんでこんなに可愛いのだろうか。

俺の継子なのがもったいない。俺には手に余る才能を持っている訳だし。

いやまあだからといって他のやつにやらないけど。他のやつに取られたら、そいつをズタズタに肉塊にするのだが、ね。



｢……、…………?A、その簪……｣



酷く耳障りな声。半々羽織の着物。


『……ああ、俺の世界でいちばん嫌いなヤツ』


｢あ、義勇さん!見てくださいこれ!伊黒さんに今もらったんですよ!素敵ですよね〜!!｣


Aと仲が良くて、俺が早く殺してしまいたいヤツ。冨岡義勇。

ああ、早く離してくれないか、Aに触れているその手を。

簪に触れているんじゃないだろ、それ。Aの柔らかくて温かい手に触れたいだけなのだろう。

ああ、ムカつくムカつく。死ねばいいのに。死ね死ね死ね死ね。

ああ、どうしてこいつが生きているんだ?早く鬼に殺されればいいのに。というかもう、俺がこの手で。



｢伊黒さん?｣



ハッとAの声で我に返る。


見るとAが顔を覗き込んでいて。

一気に顔に熱が集中する。ああ、恥ずかしい。でも……可愛いなあ、A。

ああ、もう全く。Aの前ではこんな汚い気持ちになっちゃダメだろう、俺。

Aは可愛くて……本当に天使みたいなんだから。

Aには綺麗で可愛いものをあげなくちゃ。

汚いこういう感情は、全て、全て全て全て。


外のモノに(冨岡義勇に)あげなくちゃ。



｢……大丈夫だ。Aは本当に可愛らしいな｣



薄く目を細めた俺はAの頭を撫でながら、延々と冨岡への呪詛の言葉を考えていた。

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