絶望に混ぜて希望を。【短編集】

大切で大好きなキミを他の人を犠牲にしてまで守りたかったのに。 ページ27

*うなうみゃさんリク


ガツン、と鈍器で頭を殴られたような衝撃だった。

震える指先をそっと隠すように、拳を作りながら目の前の状況を…必死に理解しようとした。


「……っ…ぅ…、」


赤く染まった制服。

俯いて固く閉ざされた唇。

頭から流れている血は…制服もろとも、床までどくどくと血溜まりを作るぐらいに流れていて。


『…ぁあ…ダメだ…全然理解できない』


なんで…どうしてAちゃんが死んでるの?


…いつもとなにも変わらないAちゃんだったのに。

可愛くて泣き虫で…オレの言うことに、ビクビクして泣きながらも…それでも、俺とずっと一緒にいてくれた優しい子なのに。

俺だってずっとAちゃんのことを泣かせてたわけじゃない。一緒に笑顔で話したりもした。

そんな…本当は誰よりも逃げ出してしまいたい状況の…ささやかな俺の幸せの時間が…もう絶対につくれない。


「…ぇ…」


僅かに声が聞こえて。

ちらりと横目で見れば…青ざめた顔で"天海ちゃん"が立っていた。

俺と同じように震えている手で、そっと口を隠すと…小さな声で言葉を紡いだ。



「…な…なんでAさんが死んで……あ…あれってもしかして…俺の…代わり…にっおわ!!???」



反射的に天海ちゃんの胸ぐらを掴んでいた。

天海ちゃんの瞳に映った自分は酷く切羽詰まった…苦しい顔をしていて。


「…今なんて言った?」

「え…ぁ……??」

「っ今!!!天海ちゃん、代わりとか言ってただろ!!!??どういうこと!!?」


天海ちゃんはそのまま…俺と視線を逸らすと、申し訳なさそうに、泣きそうな声で声を絞り出す。



「…多分…Aさんが殺される直前…ほんとに…ついさっき…会ったんす…」

「…な…にそれ…」

「すごい焦った調子で…俺の事、最原くんが呼んでるとか言ってきて…。でもいざ最原くんの所行ってみても…よ…呼んでないとか…。そうすると…俺…Aさんに…」



脳裏に出会ったばかりのAちゃんが思い出された。


超高校級の未来予報士だと言っていたAちゃん。

でも全然当たらなくて。俺はいつもそれがおかしくて笑っていて。


『…違う。本当は"当たらないんじゃない"』


全部全部見えていたのかもしれない。全部知っていて…嘘をついていたのかもしれない。

このままだと天海ちゃんが死んじゃうから。

自分が身代わりにならなきゃって。

Aちゃんは…そういう子だ。

優しくて…絶対に自分より他人を守る子だ。



「…っ……ぅ"ぁあぁ"ぁっ…!!」



両目からこぼれ落ちた涙は、冷たくなったAちゃんの右手にぽつりと落ちた。

苦いモノの後は圧倒的な甘さのモノを食べたくなる。→←ありきたりな法則を学ばなかった君が全て悪いのだ。

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