絶望に混ぜて希望を。【短編集】

不器用すぎる愛の伝え方は他人を大いに巻き込むのだ。 ページ19

*金魚丸さんリク


「…?不二咲?」


ぎゅ…と弱々しく自らの手首を握っていると、後ろから声をかけられた。

くるりとふり返ってみれば、僕の大好きな…Aちゃんが心配そうな顔で話しかけてくれていて。

急激に上がっていく心拍数と、顔に熱が集中していって…どうしようもない感情に駆られた。


「わ!!?何?また怪我したの!??」

「あ…っ…うん……不注意でつい…」


Aちゃんの視線の先には、僕のぐるぐるに巻かれた右の腕。

少し大袈裟に巻かれた包帯の下からは、ズキズキとした鈍い痛みが走っていた。

そんな僕の腕を痛々しそうに見つめているAちゃんは、そっと僕の腕をなぞる。


「つい昨日とかも怪我してなかったっけ…?」


ああ…覚えててくれたんだねぇ。

嬉しいな嬉しいな。僕の事を覚えていてくれるなんて、嬉しいなぁ。

昨日僕は、確かに"自分の不注意"で、左足を打撲してしまって…目立つ青アザを作ってしまった訳だけど。


『……もう少し…かなぁ…?』




「あの…、さ、不二咲。正直に答えて欲しいんだけど」




苦虫を噛み潰したような顔で僕に話しかけるAちゃん。

そんなAちゃんに、僕は怯えたような表情を"作る"と、どうしたのぉ?と口を開く。


『あぁ…どうしようどうしよう…!ドキドキが止まらないっ…!』




「その怪我とかって…"本当に自分の不注意"なの…?」


「っ……ぅう…!」




ぽろ…と出てくる涙。それは次々と僕の両目から出てきて、いくつもの涙の筋を頬に作っていく。

Aちゃんはいきなり泣きだした僕に混乱しながらも、優しく背中をさすってくれて。



「…おっ…大和田くんにっ…」


ぽつ…と言葉を紡ぐ。


「お…大和田…?大和田がどうしたの…?」


涙混じりの声で、必死に言葉を出す。



「大和田くんに…まっ…毎晩呼び出されてっ…な…殴られてるのっ…!!」



『…なんてね、そんなの"嘘八百"なんだけどねぇ!!』



全部全部嘘だよぉ。僕が怪我してるのも、大和田くんにやられてるってのも、今泣いてることも。

だってこうでも泣き真似とか他の屑(ヤツ)を陥れないと、Aちゃんなんか手に入らないんだもん。

だからこうして、自分で"昨日ライターの火で自分の腕を炙ったり"、"ハンマーで脚を自分で叩いたり"したんだよ。


『…ね、Aちゃん。もっと僕を心配してね』


心配して心配して心配して、僕を守って。自分から僕とAさんから…皆を遠ざけて。


「…うぅうっ…」


滲む視界でAちゃんを抱きしめて…Aちゃんからは見えないように、僕は酔狂した表情で笑った。

誰よりもずる賢いあの子はたっぷりと堪能したそうで。→←たった数時間前の出来事なのに、性格姿全てが違うなんて面白いお話だね。

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