絶望に混ぜて希望を。【短編集】

人生最初で最後の体験は白桃の匂いで満たされていく。 ページ17

*星陽さんリク


「っ……」

「………………………、」


かつて女の子とここまで密着することがあっただろうか。

クラスカースト最下位にいる僕は、彼女はおろか友達だってろくにいないから…あるわけなかった。


だけど…何故か今、知らない女の子とロッカー(?)に閉じ込められている。

状況を整理しようにも、目覚めたらロッカーに閉じ込められているのだ。意味がわからない。

しかも目の前の女の子はすごく可愛い。テレビで見るアイドルとか比べ物にならないぐらい。かわいい。…かわいいのだ。

そんな女の子と密着しているのだ。ただでさえ女の子ってだけで、色々危ないのに。


…でもまぁ…1番問題なのは…。

僕の太ももが、その女の子の足の間に入り込んでしまっているということである。

しかも超密着状態。

足を下げたり動かそうにも、下に逆さまになったバケツがあるため身動きが取れず。

その上狭すぎるロッカー。僕のちょうど胸の下あたりに…そのっ…お…女の子特有のやっ…柔らかいあれがっ……!!


「っぁ……っ…」


急に意識してずっと恥ずかしくなった僕は、自然に間にある太ももを動かしてしまった。

すると甘くて可愛い声を出す女の子。

ロッカーの隙間から漏れる光が、女の子の真っ赤な顔を照らす。

口元を隠すように小さくて柔らかそうな手で隠しながら、涙目でじっと僕を睨む。


『…ぁぅう…っ…!!ぎゃ…逆効果だよぉそれっ…!!』


「あ…あのっ…!ど…ドアっ…開けられないの…?」

「き…キミが起きる前に開けようとしたけど…な…何かが引っかかってるようで…びくともしなかった…」


女の子からする甘い白桃の匂いが僕をぐらぐらさせる。

ああやばい。本当にやばい。こういう状況って何度も憧れたけど、実際になってみると、本当にやばい。

帽子を深くかぶって、真っ赤でぐるぐるの目でいる顔を隠す。

だけどばっちり女の子と目があってしまい、それは意味の無い行為だった。


「っ…………も…もうちょい離れられないの…?」

「ぇぁっ……ご…ごめんっ…!」


謝ったのはいいものの、身動きが取れない状態である。

とりあえず形だけでも動こうと、手をどこかにおいて身じろぎしようと奮闘す


「んぅっ……!」


もにゅ…と何か不思議な感覚が左手に伝わった。

そしてそれがなんなのか…瞬時に理解した僕。

女の子が一際大きく甘い声を出したのと…僕の理性がぷつり、と切れたのは同時だった。


※※※

数分後にロッカーを開けて、現場を目撃したAと親友のプロロ赤松ちゃん

「そこの男の子。ちょっと人体切断マジックしよう?」

たった数時間前の出来事なのに、性格姿全てが違うなんて面白いお話だね。→←誰よりも扱いが難しいように見えて、誰よりも簡単なのだ。

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