絶望に混ぜて希望を。【短編集】

猛アタックしているのに微塵も気づかれない彼がすごく可哀想に見えてくるんだけど。 ページ7

*星陽さんリク


「えーと…まず妹さんの方のクレープですね。どうぞ」


Aと二人きりで久しぶりにショッピングに出かけた。

まぁいわゆる…デートなんだけど、俺ら2人は兄妹だし。

でも気分はカップルなので、らーぶらーぶ!な感じでデートしていたんすけど。


ふらりと寄って買ったクレープ屋さんで、冒頭の事を言われた。

今まで、俺らを兄妹だって見抜いた人は数少ないため、今回もAは俺の彼女扱いされるはずだったのだが…。


「妹…妹……いも…うと…」

「まぁ…間違っては無いんじゃないすか…?」

「ちーがーうーのーっ!!!!!」


店員さんから受けとったクレープを振り回しながら(危ない)、Aは駄々を捏ねたように俺に詰め寄る。


「私はお兄ちゃんの彼女なのよ!?だからそういう風に周りにも扱って欲しいのっ!!特別な存在として扱って欲しいのー!!」

「あぁ、なるほど…。…よしよし」


ぽんぽんとAの頭を撫でてやれば、機嫌を即座に治したようでお兄ちゃん♡♡と甘えた声を出して抱きついてくるA。

相変わらず可愛いなぁと思っている俺に、ゆらり…と人影が揺らいだ。




「あれ?Aさんと天海くん…?」

「ホントだ!Aちゃんやっほー!!♡♡」




最原くんと王馬くんだ。

2人は両手に結構な数の荷物を持っていたので…今度やる文化祭の買い出しだろう。


『しかし…よりにもよって今ここで会うっすか…??』


最原くんはまだ微妙っすけど、王馬くんはAのことが大好きだ。

俺という彼氏がいるにも関わらず、Aに激しめの猛アタックをしている。


「……へぇぇ…」


抱きしめあっている俺らに王馬くんは即座に気づいたようで、若干苛立ちげに感心した声を出す。

そしてすぐにへらっと笑うと、Aに近づいてキラキラした目で話しかけた。



「ねぇねぇAちゃん!!オレと今からデートしない!??」



王馬くんは空気を読めないようっすね???


「ちょ…王馬くん!!Aさんたち今デート中っぽいよ!?」

「えー?だって天海ちゃんたちって兄妹でしょ?家族でしょ?それなら、デートじゃなくてただの買い物じゃーん!」



だけど、Aはそんな王馬くんを不思議そうに見つめて…似たように、にこー!と笑いかける。



「すごいわ王馬!私とお兄ちゃんが兄妹じゃなくて、家族に見えたのね!!もう少しで婚姻届けを出せるところなの!!あ!結婚式には、ぜーーったい招待するわね!楽しみにしててね!」

「えっ…ぁ………うん…」



王馬くんはどこか泣きそうな顔をしながら、相槌を打った。

戻ってくる最後の彼の台詞はいつも以上に醜悪で醜くて反吐が出る。→←嘘つきにはふさわしいオシオキをするべきだと思います。

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