希望に混ぜて絶望を。【短編集】

ウソに塗れた事実と異なる現実結果。 ページ39

「ご…ごめんね…急に電話しちゃって…」

「ううん!別に大丈夫だけど……。どうしたの?なにかあった…?」

「…あ…ぅう……ええと…ね…」



『…あぁ、ダメだ。声が震えてきた』



本当にオレって情けないなぁ。好きな子にかっこ悪いところしか見られてない。

自然と足がガタガタ震えてきて…思わずぼこぼこと足踏みをして、震えを隠す。

そんなことをしても電話の向こうのいるAちゃんからしたら意味はないんだけど…それでもやっぱり、Aちゃんは何かを察してくれたようで。


「ま…まさか、またアイツらにやられた!!??」

「っ……あは……な…情けない話でごめんね……」


ざらり、と右手で傷跡をなぞれば、うぅ…と呻き声が出て。

その姿がなんだかすごく惨めで…酷く視界が歪む。

そんな俺に、Aちゃんはどこかとても焦ったような声を出すと…ごめん、と一言謝った。


「Aちゃんは悪くないよ…?な…なんでAちゃんが謝るの…?」

「…私…ずっと王馬を守るって言ってたのに…。守れなかった…!王馬に怪我を負わせちゃった…!!」


『…や…やだよぉ…!!オレっ…責めるつもりで電話したんじゃっ…!!』


Aちゃんの声が聞きたくなって。

このどうしようもなく絶望的な感情を、Aちゃんに上書きしてもらいたくて。


「うぅ…その…えっと…!あ…!出来たらでいいんだ…!手当して貰えると嬉しいなっ……ほら…オレぶきっちょだし…親も……アレ…だし…」


これ以上Aちゃんの泣きそうな声なんて聞きたくなかった。

その場しのぎの言葉を紡ぐオレに、Aちゃんはわかった!と言って…こちらに来てくれるようで。



『…あぁ…やっぱりAちゃんは優しいなぁ』



オレは電話を切ると…自分の足元に視線を落とす。




「起きてる?ほら、早くしないとAちゃん来ちゃうからさ。はい、これ持って」


「ひっ……」





通話中、"オレがずっとずっと足で蹴ったり、傷口をナイフで抉っていた"ソイツは、ボロボロの顔を恐怖に歪ませた。

そんなやつにオレは冷たい目で金属バットを持たすと、殴るように指示をする。



「…はーやーく。Aちゃん来ちゃうでしょ。あ、なるべく思い切りね。腕の骨折っていいから。その方がAちゃん心配してくれるし…♡♡」



『…ふふ。大好きな人に心配してもらえるって…すごく幸せだよね…♡♡』



オレが満面の笑みで笑ったのと、いじ められっこ(い じめっこ)がバットを振り下ろしたのは、ほぼ同時だった。


※

β世界線です。他のお話とは一切関係ありません。

禁断の部屋から出てこれるようにまで半日かかったような。→←進展も無ければ後退もない、ありふれたつまらない絶望的平和な関係。

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