希望に混ぜて絶望を。【短編集】

遠い遠い過去の記憶、すなわち捏造の可能性あり。 ページ37

*黒木橙さんリク


「あ…あの…Aちゃん…?」


先程から一心不乱に、オレの頭をわしゃわしゃーっ!!と撫で回すAちゃん。

長い前髪の隙間から、か細くAちゃんを呼んでみると、こちらに目を向けて…輝かしい笑顔で、にこりと笑った。


『…しっ…心臓がっ…!!!』


「王馬って犬みたいね!!とーーっても、わしゃわしゃしがいがあるわ!」

「そ…それは褒められてるのかな…?」

「ええ!いつもびくびくしてるし!まるでチワワね!!」


訂正。褒められているようで褒められていなかった。


あ…あぅう…好きな子にそんな風に思われちゃってるとか、もはや勝ち目ないよぉ…。

確かにオレはクラスのカースト最下位だし、いじ められてるし、どうしようもなく泣き虫だけどさ…。

あ…でもそのお陰で、今Aちゃんに頭撫でられてるのかな…?


……Aちゃんはオレとは正反対で、クラスの人気者だし可愛いし…。

1人で押し付けられた掃除をやっていた自分に感謝しつつ…オレはAちゃんから赤い顔を隠すように、俯いた。


「ねぇねぇ!王馬ってどうしていつも皆からお水をかけられたり、モノを投げつけられたりしているのかしら?」

「え?あ……、」


不思議そうに頭を撫でながら、聞くAちゃん。

Aちゃんは…いわゆる"お金持ちなお嬢様"だから、そういったことに縁がなかったのだろう。

だけど…事実を述べたくないし、なによりこんなかっこ悪い事実教えたくなんてなかった。

言葉を濁らすオレに、Aちゃんはちょっとだけ考えるような仕草をとると、わかったわ!と口を開く。


「水浴びをしているのね!みんな王馬とキャッチボールがしたいのね!最近暑くなってきたし…私も浴びたいわー!!」

「だ…ダメ…!Aちゃんはそんなことしちゃダメだって…!!」

「むぅ……貴方までそんなこと言うのね…。…喰らいなさい!頭ぐちゃぐちゃの刑ー!!!」


そう言い終わった途端、くすぐったく髪の毛をもみくちゃにするAちゃん。

その顔は悪戯っぽく笑っていて…胸がきゅん…と高鳴る。


『…そ…その顔はずるい…!!』


口元が緩んで、思わずこっちまで笑顔になってしまう。

なんだかすごく楽しい。さっきまでの暗い気持ちが嘘のようだ。



「＿＿＿＿あ、やっと笑ってくれたわ!」



『…え?』



Aちゃんは、オレの頭を優しく1度撫でて…また輝くような笑顔になった。




「王馬、ずっと暗い顔してたから心配だったのよ?でも笑顔になれてよかった!王馬の笑顔はとても素敵ね!!」




＿＿＿＿＿＿んぅぅううぅ…、、

進展も無ければ後退もない、ありふれたつまらない絶望的平和な関係。→←愛情増幅剤注入結果、絶望発症少女狂愛配布中。

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