妹に疎まれている。【伊弉冉一二三】

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階段を2弾飛ばしで上がって踊り場。くるりと体を捻って、さらに登っていく。

久々の運動に太ももが悲鳴をあげているが、しったこっちゃない。

息はきれてるし、心臓なんてはち切れそうなぐらいうるさくて。


『…でも、でもでもでも』


そんなの気にする余裕など何処にもないし、今は頭がガンガンと鐘を鳴らしていた。


…独歩からその言葉を聞いた瞬間、弾かれたように診察室を抜け出していた。

遠くでなんとか聞こえた病室の番号を耳に挟んでから、ずっとずっと走っている。

正反対の場所にあるようで…さっきから何度も看護師さんに注意された。


『…なんで…』


どうしようどうしよう。どうしよう、どうしよ、う。

なにかAは大きな病気でも隠していたのだろうか。

俺に他になにか隠し事でもあって…独歩に相談していたのだろうか。


だって、だって!!おかしいじゃないか。

なんで俺っちより独歩に先に連絡がいくの?そんなに俺って頼りないの?


…たまらなく悔しかった。


歯を食いしばっている俺に、ふと目に入るとある病室。

Aがいる診察室。

いつもなら…Aがいる空間に入るのには、深呼吸をしてから入るのが基本だ。

だけど、今回は違う。

ガラガラー!!と大きな音を立てて、俺はありったけの声で叫んだ。




「Aっ!!!!大丈………ぶ…??」




光に透かされて綺麗なピンク色になっている髪。

着こなしているおしゃれな制服。

近くには鞄。

綺麗な目。

…大きく開かれた綺麗な目。



「…お…おに…い??…急…急になに…」



そこにはいつもと変わらない様子のAが、こちらを驚いたようにまっすぐ見ていて。


『……?』


思考停止。ドアに当てていた手が離れて、ゆっくりとドアが閉まっていく。


「…?A…??え……?倒れたんじゃ……」

「た…倒れたけど…軽い貧血だし……?私も私で…な…なんでこんな大きい病院にいるのかわからないし……」


ぷつ…と閉じていた唇が音をたてた。


『…Aは無事』


無事。無事無事。いつも通り。問題なし。


「……っ…!!」


途端に溢れてくる様々な感情。疲れ。汗。

なんだかもう思考回路がぐちゃぐちゃだ。

俺はため息をつきながら、安堵するようにその場にすわりこんだ。



「よかっっっっっっっっったぁぁああぁあ……!!」



ああ、もう。なんだか視界が歪んできた。

俺っちって意外と涙脆い…?


1人感動しつつある俺に、Aは…どこか不思議そうな顔をしていて。

そしてぽつりと呟いた。





「っていうか…おにい、なんでこんなとこにいるの…?」

○→←急病アンビバレント/神宮寺寂雷

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