妹に疎まれている。【伊弉冉一二三】

境遇ヒント/碧棺左馬刻 ページ37

「って、ことで!教えてください旦那!!」

「あ゛あ゛?」


いつものファミレス。ただ今日は喫煙席。

煙草の独特な匂いが立ち込める席で、俺っちは目の前の人物に手を合わせた。


「妹と仲直りしたいだぁ?ンなもん勝手にしてりゃあいいだろうが」


碧棺左馬刻。横浜に住むヤクザ。危ない人。

今日も今日とてガラが悪いっすねぇ!!とは口が割けても言えないけど…いやいや、そんなこと言ってる場合じゃない。


どうして俺っちがこんなヤク…左馬刻"さん"にいつもの頼み事をしているかと言うと。


『左馬刻さんには俺っちと同じく妹がいる!!!!!』


どうして今まで気づかなかったのだろうか。こんなにも身近に相談相手はいたというのに。

しかも聞いたところ…結構仲はいいらしい…??し…??

い…いや別に羨ましくなんかないし!!!俺っちとAもな…仲良いしぃ…??


「そこをなんとかー!!つーか出来ないからこーして相談してるんじゃないっすかー!!左馬刻さんってもしかして…おバカさん?」

「おいテメェ表出ろ」


でも…さっきからこうしてお願いしているのに、一向に取り合ってもらえず。薄情者!!

うぅう…と唸る俺っちに左馬刻さんは、どこか呆れたようにタバコの煙を吐きながら呟く。


「…普通に謝ればいいじゃねぇか。ごめんなさい、許してくださいって」

「いやぁ…それでも許してくれなかったって言うかぁ…ぶっちゃけなんで怒ってるか分かんないっていうかぁ…?」

「はぁ…?どういうことだ…?」


おっ。やっと聞いてくれる感じに?!


俺っちは身振り手振りで左馬刻さんに今までの経緯を説明する。

すると最初は興味深そうに聞いていた左馬刻さんだったが…だんだんと顔を顰めていき、どこか考えるような顔になった。

そして一通り話終わった俺に、左馬刻さんはぽつりと一言質問した。


「…なぁ、テメェのその妹が口を聞かなくなった時期っていつぐらいだ?」

「え?…うーんと…確か中学生の…冬……頃…だったような…?」

「……へぇ」


妙に納得したような顔になった左馬刻さん。

そしてそのまま黙って、つまらなそうにコーラを飲み出す。


「って、え?!!!!Aがなんで怒ってるか分かったんすか?!!」

「うるせェ!!むしろわかんねぇのかよ!」

「わかんないっす!!!教えてください!!」


さっすが妹持ちの兄貴!痺れる憧れるー!!


左馬刻さんは苛立ち気に舌打ちをして、じっと俺を睨む。

そして開き直りつつある俺に、頬杖をつきながら…ボソリと呟いた。





「……[お前自身]。それがヒントだよ。あとは自分で気づけこの大馬鹿野郎」

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