妹に疎まれている。【伊弉冉一二三】

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「別にもう子供じゃないんだから、帰り道1人でも平気だって言ったのに…」

｢それは…ごめんね……でも、俺が心配だし…、｣



夕暮れ時。

周りがオレンジジュースの中のように、綺麗な夕焼け色に染まっていた。


カフェでしばらく談笑した俺達。

Aちゃんがさも当然かのように1人で帰ろうとしたので、慌てて引き止めて一緒に帰ることにした。

男としても女の子を1人で帰すなんてことできないし…いや、それ以上に心配だし。



｢…………………………、｣



少しだけ不機嫌そうな顔をしているAちゃんは、そんな顔でも十分すぎるほど可愛くて。

さっきからチラチラとすれ違う男性陣が見ていることが気がつかないのか。

俺に向けて、なんだよこんな冴えない男が彼氏か?という視線が妙に痛い。



｢…そういえば、さ｣



Aちゃんがくるくると髪を弄りながら、口を開く。





｢あたしが来る前まで独歩さんは誰と会ってたの?飲みかけ?っぽいアイスティー飲んじゃったけど……｣






とんでもない時限爆弾が投下された。

これはまずい。ピンチだ。


｢えっ………とぉ…?｣

｢誰?独歩さんの会社の同僚?おっさん?…それはさすがにちょっとヤダだけど……｣


いや、Aちゃんにとってはそっちの方がまだマシかもしれない。

綺麗で純粋な瞳が、俺に訴えるようにまっすぐ見つめる。

それがたまらなく心臓を締めつけた。


『どうしようどうしようここで正直に言ったらマジでAちゃんと一二三の仲が終わる』



｢……まさか｣



ずっと黙っている俺に何かを察したのだろう。

青い顔でAちゃんは、ぽつりと呟いた。


｢……………おにいと?｣

｢あ……ぅ………、｣

｢うわもう最っっっ悪…!!!!｣


Aちゃんは嫌悪するように舌を出して、苦い顔をした。

本当に実の兄が嫌いなようで。


『でも呼び名はちゃんとお兄ちゃんなんだよな…』


そこは何故なのだろうか。

しかも『おにい』って。ホントに子供っぽい。


………ああクソ、やっぱ死ぬほど羨ましい!!!


｢……っていうかホントに…なんでそこまで一二三の事嫌ってるんだ…?｣

｢……………………、｣


気がついたら言葉に出ていた。

慌てて口を押さえるがもう遅い。


Aちゃんは不気味なぐらいに真っ暗な目で数メートル先を見ていた。

そして苦虫を噛み潰したような顔で言ったのだ。



｢……おにいは絶対に許されないことしたのあたしに…!!絶対……絶対許してやるもんか…!!｣

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