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episode.5 ページ5

どこからともなく現れたこの飄々とした男、「不破湊」。


どうやら彼は三枝の大親友らしい。幼稚園、小学校と一緒だったけれど中学校で不破くんは私立に行ったため離れてしまい、高校でまた同じになったんだとか。私の名前を知っていたのも、そのせいだ。


結局この日は学校までずっと一緒に登校していたのだが、校門を抜けたあたりから何だか周りが少し騒がしい。


「ねぇねぇ、あれが昨日あんたが言ってた不破くん!?ガチでかっこいいじゃん!」


「でしょでしょー、正直一目惚れなんだよね」


「おまけにめちゃくちゃ優しいんだって…欠点ないじゃん」


「…でも見て、横にいるあの子、誰だろ」


……まずい。


どうやら不破くんはかなりの人気者らしい。昨日入学したばかりだというのに、もうそんな話が出てくるのか。高校ってすごい。


そんなことを考えてる場合ではない。普通にこのままだと双時学園女子多数に嫌われる羽目になる。


でも今更逃げたらそれはそれで嫌われそうだ。逃げ場がない。


「ほんとだ、誰なんだろー」


……。


「いいなー、羨ましい…。私も不破くんの横に並べるように自分磨き頑張らないとっ」


「そうだね!一緒に頑張ろー!」


「うんうん!」


いや民度良すぎないか。思わずニヤニヤしちゃった。


「ははは、みんな優しい人やね。よかったよかった」


不破くんも少し危機感を感じていたようで、ほっとしたような顔で笑っていた。


とりあえず私達は少し早足で教室に向かった。昨日は気づかなかったけれど、不破くんは私や三枝と同じ2組だった。


「え!なんでAさんがふわっちといんの!?」


やはり一番最初に大声で詰め寄ってきたのは三枝だった。まあ今回ばかりは状況が状況なので仕方ないような気がする。


「実は…」


大方説明を終えると、三枝は


「へぇ…なるほど…」


と言いながら引き下がっていった。そして、


「今日はどうする、来る?」


と小声で不破くんにささやくように話しかけるのが聞こえる。


「……うん」


不破くんの情けない返事を最後に、三枝はその場を離れてしまった。明らかに放課後の遊びを誘うようなテンションではない。


突然教室の隅に漂い始めたずっしりと重い空気に、私は思わず首を振って駆け出した。

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作者名:miya | 作成日時:2023年10月20日 0時

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