変わり者姉妹、運命に抗う模様 (ページ31)

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第312話戦争、閉幕ページ31

里奈の言葉にポカンとしていた梨香が、はっと我に返った。
「お、い。姉貴！なに言ってんだよ！」
そのまま里奈のもとへ駆け寄り、肩を掴んで揺さぶる。
「バカなこと言ってんじゃねェよ！俺達にはまだやらなきゃなんねェことが」
「梨香」
「ッ！」
まくし立てる梨香を制し、里奈は彼女の手にサラマンダーを乗せた。
「これ、預かっててほしい」
「おいだからふざけんなッ！」
「ふざけてなんかない」
「じゃあ、じゃあなんで！」
「……梨香。最悪、あなたにはちゃんと逃げてもらいたい」
震える梨香を、里奈はそっと抱きしめた。
「シャボンティ諸島ではありがとう、次は私の番だよ」
「あね、き」
「もちろん死ぬ気はないけど、梨香の代わりにだったら私は何回でも死ねる」
「おい、やめろ」
「梨香、大丈夫。梨香ならきっとやれるって」
「やめろ、ほんとに」
「信じてるから。だから、梨香も──私を、信じて」
「…………」
小さく、その頭は上下に揺れた。
「よし、いい子だ──少し、行ってくる」
「……あァ」
静かに視線を合わせ、2人はすれ違った。
梨香が歩みを進めていると、1人の男が彼女に手を差し出した。
「乗るかよィ？」
「マ、マルコ隊長！？」
「鳥野郎……」
突然の申し出に、白ひげ海賊団はもちろん梨香も大きく目を開く。
「いいのかよ？」
「逆に聞くが、船もなしにどうやってここを出るつもりだ？」
「…………」
そういえばとばかりに梨香が海岸を見渡すと、囚人達が乗っていた軍艦はとっくに出航していた。あるのは海軍の軍艦と、白ひげの残った船と、赤髪の船のみ。
「……厄介になる」
「気にすんなよィ」
その手を取るとマルコは鳥の姿となり、梨香を船上へ引き上げる。
「行くぞ」
その言葉にはっとして海賊達は船に乗り込み、間もなく彼らは出航した。里奈は、じっと見つめる。
「…………」
一瞬、2人の視線が混じり合い。しかしそれはすぐに逸らされた。
船が、ゆっくりと岸を離れていく。それを見届けて、里奈の目は静かに閉じられた。
ドサッ
「ッ！？」
糸が切れた人形のように倒れ伏す里奈。彼女の顔には、安心したような笑みが浮かんでいた────

頂上戦争、ここに閉幕！