変わり者姉妹、運命に抗う模様 (ページ27)

今日:1 hit、昨日:0 hit、合計:4,940 hit

第308話目的ページ27

エースがルフィを庇い、赤犬のマグマに貫かれている。それを梨香は、呆然と見ていた。その目からは徐々に光が消え、焦りを見せていた顔は無表情へと変わっていく。エースがもう手遅れなのは、わかりきったことだった。
しかし、梨香は再び走り出した。そのままルフィを仕留めんと赤犬の振った拳を蹴り上げ、淡々と指示を下す。
「ジンベエ、ルフィを安全な場所へ。鳥野郎、火拳の遺体を移動させておけ」
「……わかった！」
「お前……！」
「ああそれと、鳥」
近くに降り立ったマルコに、そっと耳打ちをする。
「─────、───────」
「……え？」
「考えといてくれ」
話は終わったとばかりにマルコに背を向け、梨香は赤犬と向き合った。
「おんどりゃァ、何度も邪魔をしおって……！」
憎々しげに睨まれてもいっさい動じることなく、ふうっと息を吐く。次の瞬間、彼女は豹変した。
「殺すッ！」
「ッ！？」
死ぬ。赤犬の脳裏には、その言葉だけが浮かんだ。殺気、そして怒気。今までの比でない大きさのそれらが、ダイレクトに襲いかかってくる。その勢いに、彼は動くことも忘れただ唖然として突っ立っていた。
梨香の振るう雪月花が赤犬に触れようとした、そのとき。
ザシュッ！
「梨香、やめなさい」
「ッ！？」
里奈が、その刃を優しく受け止めていた。驚愕する梨香と赤犬。しかし、赤犬には驚いている暇などなかった。
ドン！
「！」
白ひげの怒りに満ちた拳が彼を襲い、その口からは血が吐き出される。一方負けじと放ったマグマにより、白ひげは頭部の左半分を失った。
背後でそんな惨状が繰り広げられているにも関わらず、里奈は静かに梨香に話しかける。
「梨香、私達の目的は殺しじゃない。そうでしょ？一時の感情に惑わされるな」
「……ああ、すまん」
「これ以上被害を出す意味はない。私が足止めをするから、早急に白ひげさんを説得し撤退を」
「わかった」
会話を終えて、2人が静かに視線を上げる。そこには、黒ひげ海賊団の姿があった。