ギャップ ページ34
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水神矢成龍。星章学園サッカー部のキャプテンを務め、落ち着いた性格でチーム全体のまとめ役でもある彼はサッカーから離れると、表情も、考え方も行動も何もかもが真逆だ。
水神矢のファンである世の女の子がそんな一面を知れば、驚くこと間違いない。
｢(まあ、ファンの子の中にはそのギャップがいいって子もいるんだろうけど……)｣
自分の失態に酷く落ち込んで、調理台に片手をつく水神矢の姿に痛いほどの視線を送りながら｢(私にはわからないわね……)｣と口元を引き攣らせて嘲る。
｢(それにしても、水神矢くんはどうしてそこまで私と灰崎くんを一緒にさせたがるんだろう。何か他に、特別な理由でもあるのかな)｣
水神矢から言われた言葉が、脳の中で再生される。
『 " お前が作ったものなら、灰崎も喜ぶ " 』
彼は元々灰崎に対する贔屓が少し過ぎるようにも見える。誰よりも傍で成長を見守ってきた水神矢にだからこそ、言われた時の説得力は相当なものであり……。
｢でもまあ、水神矢くんがそこまで言うなら作ってあげなくもな……｣
｢決まりだな！！｣
｢う、うん……人の話最後まで聞こうか水神矢くん。あといい加減おにぎり置いて｣
まんまと煽てられて、差し入れ作りに加わった。赤く染まった頬を人差し指で掻きながら気恥しそうに目を逸らしたAに、水神矢は御満悦だ。立ち直りが早く単純なところは、円堂に通ずるものがある。
｢そうと決まれば急いで作りましょ。そろそろマネージャーも起きてくる頃だろうし、早く片付けないと｣
｢もうそんな時間か｣
厨房の時計を見上げた水神矢が、少しばかり驚いたように呟く。時刻は六時半を回っていた。選手よりも早く起きて朝食の準備に取り掛かるマネージャー達がそろそろ起きてくる時間だ。
｢まだ熱いから、火傷しないようにな｣
｢うん｣
水に浸した杓文字を掴んで、サランラップの上に湯気が立つご飯をのせていく。早朝から厨房に立つ新鮮さを感じながら、Aは手際よく握り始める。
｢さすがマネージャーだな｣
｢元、マネージャーね。おにぎりは雷門にいた頃からみんなへの差し入れで作ってたから慣れてるだけよ｣
はい、完成。そう言って綺麗に三角で纏められたおにぎりを隣で眺めていた水神矢に渡し、再び杓文字でご飯をかき集める。
｢差し入れって言うけど、灰崎くんいつもこんな朝早くから練習してるの？｣
握る手に集中をしながら、Aは前から疑問に感じていた質問を投げかけた。
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作者名：小雪
| 作成日時：2019年10月15日 21時
