駆け引き ページ24
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FFI世界大会準決勝は日本がイタリアを棄権させたことで必然的なイナズマジャパンの勝利が決まり、決勝進出の切符を手に入れた。
得点ではイタリアが一点をリードしていたことから、この試合は日本にとっても後味の悪い試合だ……と後の報道で伝えられていた。
＿＿日本がイタリアに勝利した次の日。
日本の対戦国を決める決勝進出を駆けたロシア対アルゼンチン戦が開催された。観客席には偵察に来たのか、日本の日暮Aと一星光の姿が見受けられる。
｢うん、中々いい見晴らしね！取って正解だったわ｣
販売店から買ったアイスを手にフィールドを見回しながらAが云った。そのまま満足気な表情で席に腰を下ろすと、持っていたアイスをぺろりと舐める。
｢それにしても、よくこんな良い席取れましたね？準決勝なんて席を取るだけでもやっとなはずなのに…｣
今二人がいるのは入場口の真上に位置する席。行進している選手達との距離は目と鼻の先だ。土壇場で取れるような席ではないことを一星は知っていた。
その問いに対してAは、横目で一瞥すると溶けていくアイスを見つめながら一言。
｢まあ、強化委員の地位も伊達じゃないってことよ｣
＿＿おとずれる静寂。二人の間に流れるのは、実況者の声と興奮に染まった観客達の声援のみ。
その沈黙を生み出した張本人は、涼しい顔でアイスを食べている。一星は呆気にとられていた。
｢もしかしてAさん、ズルしました？｣
｢……｣
冷や汗をかきながら、おずおずと尋ねる。するとAは垂れた雫を舐めようと唇の隙間から覗かせていた舌を引っ込めた。そしてそのまま顔を一星に向けると、もう片方で持っていた別のアイスを差し出した。
｢はい、アイス｣
｢(思いきりはぐらかした！！)｣
｢早く食べないと溶けちゃうわよ｣
｢あ……ありがとうございます｣
目の前に突き出されたアイスを受け取った一星。見事にはぐらかされたことを気にしながらもお礼を告げると、Aは｢ん、｣と素っ気ない返事をしてから再び顔をフィールドに向けた。
｢(それにしてもAさん、一体どんな手を使って席を取ったんだろう。さっきの様子から、話しにくいことなのは分かったけど……くっそぉ、気になる)｣
なめらかなクリームを舌で舐め上げるように堪能しながら、一星は心の中で自身と葛藤する。時折視線をAに送っているが、気づいていないのか確信犯なのか、目が合う気配はなかった。
(美味しいね)
(そ、そうですね…)
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作者名：小雪
| 作成日時：2019年10月15日 21時
