必死の訴え ページ2
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ウラジミールが、山積みになったサポーターを選手の足元に投げ捨てた。
｢え……｣
｢どうして｣
反抗もせず、投げ捨てられたサポーターを取り付けていくイタリア選手の姿に、イナズマジャパンは目を疑った。その中でもAが冷静でいられたのは、こうなることが事前に予測できていたからに違いない。
｢なんで、なんでだよ｣
｢待って明日人！｣
理解し難いその光景をめにした明日人は、いても立ってもいられなかった。すぐさま相手ベンチまで足早に歩いていく。Aが慌てて引き止めようと腕を掴んだが、それも簡単に振り払われてしまった。
｢あのバカ！また何かあったらどうするのよ、もう！｣
勝手な行動を取る明日人の背中に投げ打って、Aもすぐにその後を追った。頭に血が上って、前が見えていないのだろう。どんな理由があるにしろ、敵のミーティング中に対戦国が横入りしていいわけがない。
｢明日人、待ちなさい！｣
｢なんでまたつけてるんだよ！｣
Aが呼び止めるも、時すでに遅し。イタリアエリアに侵入した明日人は、迷わずサポーターを装着したペトロニオの元に歩み寄り、その理由をたずねた。
｢しかたがないんだ。やっぱり命令には逆らえない」
そう言って、明日人から目を逸らすペトロニオ。その顔は苦渋に染まっていた。誰よりも一番辛い思いをしているのは、間違いなくキャプテンである彼なのだ。
｢明日人、あなたの気持ちは分かるけどここで彼と議論するようなことじゃないわ。早く戻りましょう｣
相手を気遣うように、Aが明日人の後ろから肩に手を置いて宥める。板挟み状態であるペトロニオの心情を察したAは、これ以上彼を責めるべきではないと判断したのだ。
だが、その思いが明日人に響くことはなかった。
「どうして！？このままじゃ自分たちの体が壊れるんだぞ！」
本人たちよりよっぽど危機感を持っている発言を繰り出すが、ペトロニオは応えない。明日人は思わずペトロニオのサポーターに包まれたひじを掴んで詰め寄り、必死に思いのたけを叫ぶ。
「今、サッカー楽しかっただろ！？伝わってきたよ、俺たちもお前たちもみんな、自分のサッカーを思いっきりやっただろ、なのになんでだよ！！｣
｢やめて、明日人｣
感情のままにペトロニオ達に言葉を浴びせ続ける明日人の姿に、Aはその後ろで胸を痛めていた。
自分の声が届かない場所にまで"彼"という存在が遠く離れていったような気がして、ならなかったのだ。
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作者名：小雪
| 作成日時：2019年10月15日 21時
