要因人物 ページ1
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FFI世界大会準決勝。イタリア対日本の試合は、前半三対一でイタリアが二点をリード。日本にとっては厳しい状況のまま後半を折り返すこととなった。
だが、イタリアは後半からの監督交代を進言した。その話は、瞬く間にイナズマジャパンにも告げられる。
｢急に監督を交代なんて、何かあったのかしら？｣
｢分からない｣
突然の交代に、戸惑う面々。Aと明日人もその中の一人だった。何かよからぬ空気へ変わろうとしている.......不安が過ぎった
＿＿入場口から、一人の中年男性が姿を現した。
｢ねえ、明日人。あの人ってまさか｣
｢あぁ......｣
｢やっぱりあいつ、魔女の手先だったのね｣
見覚えのあるその人物に、Aは明日人の肩を叩き、耳打ちをする。彼こそが稲森真人という偽名を名乗り、生き別れとなった父親のフリをして明日人に近づき誘拐した要因人物であった。
｢知り合いなのか？｣
何も知らない氷浦が、不思議そうに首を傾げて訊ねると、Aは心底不快だとでもいうように顔を顰めた。そして、｢知り合いなんて、そんないいものじゃないわ｣侮蔑を極めた冷たい声で答えた。
｢じゃあ、一体……｣
｢アイツが明日人を騙して私たちを誘拐した犯人よ｣
彼女の言葉に、仲間達がザワつく。
｢アイツがお前らを……｣灰崎の声が、微かに唸るように聞こえた。その一言で日本の選手はウラジミールという男への警戒と、敵意をむき出しにし始める。
｢たぶん、立場的にはイリーナに近しい人物だと思う。…よりにもよってアイツがイタリアの監督に就任することになるだなんて｣
｢.......｣
偽父兼誘拐犯のご登場ともなれば、さすがの明日人も口元を歪めざるを得ない。Aが忌々しげに男を睨めつけている間も、彼は一言も話さなかった。父親を冒涜されたようなものなのだから、無理もない。
『新たな指示を出す。いいか？俺が来たからには、もう勝手なマネは許さんぞ』
コーチからタブレット端末をふんだくった男(ウラジミール)は、横柄な態度でミーティングを行った。先程まで生き生きとしていたイタリア選手の顔はすっかりと曇り、肩を萎縮して身を縮めていた。
｢あれじゃ選手がかわいそう......｣
痛ましいその光景に、Aが物悲しげに呟く。
サポーターという鎖を自ら断ち切った彼らが、ようやく純粋にサッカーを楽しめると思っていた矢先にこれだ。このままではまた、辛い目に遭わされるだろう。
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作者名：小雪
| 作成日時：2019年10月15日 21時
