真空波 ページ7
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担架で運ばれたガブリエラに代わって、新たに投入されたのはラケリト・スプトだ。会場が沸き上がる中で日本陣営では、並々ならぬ不穏な空気が流れていた。
「それで？成功する見込みは？」
「五分、と言ったところかな」
首を振り、Aは頑なに拒んだ。十一人の選手生命がかかってるともなれば、博打のような賭けにでることは望ましくない。慎重になるのも無理はないのだ。
「だけど、やってみる価値はあると思わないか？」
「風丸さんまで何を言い出すんですか！」
先程まで否定派だった風丸の発言とは思えない。顎に手を添えて、真剣な面持ちを浮かべる風丸へとAが迫る。だが、そんな彼女の肩に手を置く者がいた。
「なら、このまま指をくわえて見ているのかい？」
＿＿アフロディだ。その言動から、彼もまた明日人の出した作戦の肯定派だということが見て取れる。
「でも……」と言いかけた言葉を噤んで、Aが辺りを見回す。坂野上も、水神矢も、海腹ですらも利害が一致しているような顔をしている。
「万が一に備えて、灰崎くんにも事前にスタンバイしてもらおう。彼がいればなんとかなるかもしれない」
暗い顔をして俯くAを気遣って、野坂が云った。
｢方法はアレだな。真空波を食らわせて、気絶させてやればいい｣
どうやら灰崎も理解したようだ。雷門対王帝月ノ宮戦で使ったグリッドオメガ対策を身に着けた灰崎ならば、真空波で皆のダメージを軽減できるだろう。
周りが同意を示す相槌を打つ中、Aは……。
｢待って！みんな本気なの？」
｢それ以外にイタリアを助ける方法がないからね｣
｢だからって、全員を助けられる保証もないでしょ｣
周りの空気に流されず、野坂に反論した。地面に落下する直前に真空波を放ったとしても、日本陣内からでは飛距離が足りない。数名の選手が犠牲になるのは確実だ。
｢俺の真空波が信用できないっていいたいんだな？」
｢そういうわけじゃないけど……」
｢だったらやるしかねえだろ」
気分を害した灰崎が、腕を組み、顔を顰めた状態で率直に言えばAは気まずそうに目を逸らす。今の日本に、選択を迷っていられるほどの時間も猶予も残ってはいなかった。
「ごめん、空気悪くして」
「決まりだね」
そして彼女もまた、周りから放たれる肯定派の気迫に押されて、同意する他なかった。視線を感じたAが顔を上げると、明日人と目が合う。しかし二人は、気まずそうにどちらからともなく顔を逸らした。
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作者名：小雪
| 作成日時：2019年10月15日 21時
