一風変わった特訓 ページ19
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スコーリオは、肩を竦めて言った。
｢oh.....！ごめんシーバ申し訳ヴィエート！｣
様々な国の言語を合わせた謝罪は、実にインチキ臭い。Aからの白けた眼差しが冷たく突き刺さる。
｢本当に申し訳ないとか思ってるんですか？｣
｢もちろんでーす！切腹しますか？｣
｢いや、しなくていいから。何でそうなるの？｣
｢日本人の謝罪は、切腹と聞きました！｣
｢いつの時代よ…｣
時代劇に染まっているスコーリオは時折、何かと腹を切りたがる発言ばかりを繰り返す時があった。その意味を本当に知っているのか定かではないが、Aは諦めるようなため息をつくと、体を翻した。
｢もういいから、とっとと始めてください｣
｢了解でーす！｣
背中を向けて再びポジションにつくAに、楽しそうな笑顔で両手を振るスコーリオ。なんとも異様な光景に、一星は冷や汗を垂らす。
｢あんな様子で、本当に大丈夫なのか？｣
テンションの高いスコーリオと、面倒臭そうなA。全くの正反対な性格を持つ二人に、柵越しからそのやり取りを眺めていた一星は、特訓が始まる前から、先行きが不安になった。
脳天気なスコーリオに一時は興が削がれてしまったAであったが、マトリョーシカの前に立ち、ボールを足下に二つ並べると目の色が変わる。そして静かに片手を上げて、スコーリオへ合図を送った。
｢まずーはレベル１からのスタート！｣
｢あーもう！レベルとかそんなのありませんから！｣
｢一度言ってみたかっただけでーす……ぽちっと｣
どこから取り出したか分からないリモコンを手元に、スコーリオは人差し指でボタンを押す。
するとその操作に反応したマトリョーシカ達が、迫るように左右へ体を揺らしながら動き始めた。
｢う…動いた！？｣
これまで見たこともない光景が眼前に展開されるみたいに、一星は息を呑んだまま唖然となる。
｢これは……どうなってるんだ？俺達がやった時は、監督達が手動で動かしてたのに｣
元々このマトリョーシカ特訓法は、世界の強豪チームに対抗するために趙金雲が考案し、サッカー協会側に作らせたフィジカルを鍛えるものだ。
プレーヤーは、左右に動くマトリョーシカを前に、ドリブルで上がりながら臨機応変な対応を迫られる。
｢はあぁ…っ！｣
しかし今回は、それと酷似しているだけで根本的な練習法とは違った。なんとAはあろうことか足下にあったボールを片方だけ、巨大マトリョーシカに向かって故意に蹴り放ったのだ。
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作者名：小雪
| 作成日時：2019年9月18日 14時
