免罪 ページ48
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「これならどうだー！」
そう叫んで、明日人がノーマルシュートを放つ。
｢なんて曲がりやがる！？｣
マセロが予想外のカーブに苦しみつつ追いつく。すると明日人は、わざとらしく「あー、惜しい！」と白い塊を取り出す。石鹸にしか見えなかったが「滑り止めはなかなか効いたな」という発言。
「お前ら何も感じないのか！こんなサッカーをして！」
ミゲルが、いつかのウズベキスタン代表のキャプテンも同じ境遇に立たされた際に発していた言葉を、彷彿とさせるフレーズを放った。
すると明日人が、とぼける。
「こんなサッカー？」
相手が術中にはまっている確信からか、強気な表情で「なにかまずい？」と、本当になにも悪いことはしていない強みで、開き直ったようにしか見えない発言をして、氷浦と共に自陣へと戻る。
｢…はぁ｣
その一部始終を目撃していたAは、腰に手を当て、やれやれと首を振り息を吐く。そして、先程から客観的にフィールドを見回しては、日本の動きを観察しているアルトゥールの元へと歩みだした。
｢アルトゥールくん｣
｢悪いが、今は……｣
馴れ合うつもりはない、と片手で制したアルトゥールに構うことなく、Aがある言葉を発する。一方、その言葉を耳にしたアルトゥールは、途端にその瞳を大きく見開き、目の前の少女を凝視した。
＿＿鳴り止まぬ歓声が木霊する会場
フィールドでは、自陣のゴール前に集まったブラジル選手達が、日本を忌々しげに睨みつけている姿が中継にも流れていた。
｢こうなったら、徹底的に潰そうぜ！アイツら、平然とした顔で反則技をやってきやがる。気に食わねえ｣
愚直なプレーで心を動かした明日人までもが手のひら返し。心理的ショックを受けるブラジル勢。
｢平然と？それは俺たちが言える筋合いか？｣
アルトゥールがそれを指摘するが、ミゲルが言い返す。やりたくてやっているわけじゃない、と。免罪符にしては弱く、開き直れてもいない発言だ。
「俺達がやってきたことは、そんなことだったんだよ」
アルトゥールは、静かに現実をつきつける。
「俺達が反則で点をとったとき、日本の奴らだって感じたんじゃないか？今のお前達と同じ悔しさを」
そして、自分が犯した過ちを責めるように言った。言い分を聞いたルシアンが「わかってるさ。これが間違っていることだって、最初からわかってたんだ!!」と認めはするが、現状は変えられないと言う。
指示には逆らえない、勝たなければいけない、と。
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作者名：小雪
| 作成日時：2019年9月6日 5時
