接触 ページ42
❀
水神矢と剛陣が、サムエウを左右から挟むように駆けあがり、アツヤがオーストラリア戦でヒロトが見せた「ああ悪ぃ」とサタンを妨害した時の光景を思い起こさせる横切り方をした。
サムエウは日本の罠にかかり、転倒してしまう。
「お得意のフィジカルはどうした？」
「なに！？」
フィールドに這いつくばるサムエウを見下ろし、アツヤが意地らしい顔をしながら煽る。その言葉に頭へと血が上ったのか、サムエウは声を荒らげて悔しそうにアツヤを睨みあげた。
「楽な仕事だな」
背後から聞こえた、確かな声。サムエウが恐る恐る振り返ると、そこには日本のDF水神矢が。彼はテグスのようなものを歯と歯の間に挟み、引き伸ばしている。
「ま、まさかお前ら！」
嫌な予感が、サムエウの頭を過ぎる。声を張り上げてそう叫べば、水神矢達は素知らぬふりをしてその場を離れていく。その態度が、断定できる決定的な証拠となり、サムエウの不信感を募らせた。
剛陣がアツヤに近づく。
「上手くいったのか？」
答えは、その表情が物語っている。終始緊張により鳴りっぱなしだった胸に手を当てた剛陣が、安心しきった顔でホッと息を吐き、胸を撫で下ろす。
ブラジル勢がこの臭い芝居を本物の反則だと誤認するなら、根拠は確実に、自分たちが後ろ暗いことをしているからだ。もし自分をシロだと信じていたなら、日本の慣れない小細工かどすぐ見抜くだろう。
「水神矢か。あいつ、大した役者だぜ」
アツヤの口元には、明け方の三日月のような笑みが浮かんでいる。そんな悪戯っ子のような顔を見せるアツヤの元へ、腕を組んだAが現れる。
「それは決して喜ばしいことじゃないけどね」
「お前は一々うるせぇんだよ、優等生」
「ま、猪突猛進なあなたにはお似合いな手だけど」
「はあぁ!?」
べっと舌を出したAは、無愛想なその顔をふいっとアツヤから背けて立ち去っていく。
「なんなんだよあのガリ勉女〜!!」
せっかくのいい気分を台無しにされたことに腹が立ち、頭を抱えて苛立つアツヤに「まあまあ… 」剛陣が苦笑をしながら宥めていた。
「まさか、日本がやるわけねえ」
「だな」
サムエウとロランは、日本がそんなことをするわけがないと勝手に納得。その後ろでアルトゥールは静かにイナズマジャパンの様子を観察していた。
試合は進み、ブラジルは着実にパスを繋いで、落ち着いて攻め上がる。日本は防戦に徹するという作戦なのか、攻めあがる姿勢を一切見せなかった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 112人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「イナズマイレブン」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：小雪
| 作成日時：2019年9月6日 5時
