星を超えた想いを39【オリオンの刻印】 (ページ29)

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成長ページ29

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町の上空を舞うスズメが、放課後の埃のようにランダムにきらきらと輝いている。そんな工場の敷地内で、ボールの転がる音と子供達の楽しげな声が響き渡っていた。

『ビシッと行くぜ！』

シュートを決めようと、意気込むミゲル。しかし、足がボールに取られてしまい、地面に転げてしまう。そんなこぼれ玉を、ベルナルドがカットした。

『あぶねー』
『悪くないぞ、きっとすぐに上手くなる』
『ほんと！？』

目を輝かせるミゲルに「あぁ」と短く返事をしたベルナルドは、ポケットに手を突っ込んだまま、足先でボールを拾い上げる。

そして次の瞬間、凄まじいシュートが横を通り抜け、後ろの壁へとぶつかった。

『すげぇ……』

何が起きたのか分からず、目を疑う子供達。咄嗟に後ろを振り返れば、回転がかかったボールが滑り落ちると、壁には衝撃で出来た傷がつく。その跡から、ベルナルドのシュートの鋭さが伺えた。

『みんなすぐにできるようになるさ！俺がなんでも教えてやる』

＿＿それが、全ての始まりだった。アルトゥール達は、あれから毎日仕事が終わる度に、嗜みの一つとして一時間だけサッカーを続けていた。

『よっしゃ！』
『ナイスシュート、アルトゥール！』

日々の鍛錬の成果が日に日に向上していくのが嬉しかったのだ。いつしかドリブルもジュニアサッカーチームに相当するくらいの実力まで上がり、仲間と連携してシュートを決めることも出来た。

『ナイスシュートだったぞ、中々筋がいい！』

ハイタッチを交わすアルトゥールとルシアンに、声をかけたのは、手を差し伸べた青年ベルナルドもまた、そんな彼らの成長を心から喜んでいた。

『くそっ！やり返してやる』

悔しそうに地団駄を踏むミゲルに、ダニー二ョからのパスが通る。しかしまたも、あの時のように足がボールに取られて、ミゲルは派手に転げてしまう。

「いてて…」と顔を上げた彼の顔にはたくさんの泥が張り付いており、それを見たアルトゥール達は、指をさしながらお腹を抱えて笑いあった。

『どうしたの？』

それは、ベルナルドも例外ではなかった。微かではあるが、口元に手を当てて笑んでいたのだ。それに気づいたアルトゥールが問いかけた。するとベルナルドは、懐かしむように目を細める。

『見てると思い出すんだ。お前達と同い年ぐらいの、弟のことをね』

ふーん、とあまり興味がなさそうに聞き流す子供達の一方で、アルトゥールだけは楽しそうに話すベルナルドの話に耳を傾けていた。