星を超えた想いを39【オリオンの刻印】 (ページ28)

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笑って過ごすページ28

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＿＿笑って過ごせなければ意味がない。

青年が子供達にそう語りかける。顔には固唾を吞んでいるような真剣な色が表れていた。だが一方の彼らは、鳩が豆鉄砲を食らったように呆れ返っていた。

『笑って過ごす？』

『何言ってんだお前、アホか』

ダニー二ョが首を傾げる隣で、ルシアンがやれやれと肩を竦めて、バカにするよう笑った。きっと今の彼らにとってこの青年は、能天気でお気楽な大人……という印象しか抱いていないことだろう。

『お前達はそれで幸せなのか？』

それでも、青年は諦めなかった。子供達が耳を傾けてくれるまで、何度も説得を試みる。

『お金のためだけにへとへとになるまで働いて。明日が来ることになんの希望も持っていない。お前達は本当にそれでいいのか？』

子供ながらに思うところがあったのだろうか。アルトゥール達は、互いに顔を見合わせあった後、視線を、再びボールを手に持つ青年へと向ける。目の色が少なからず変わったことに青年も気がついた。

『お金を稼ぎながらだって、サッカーはやれる。お前達はお前達自信で、幸せを見つけるんだ』

さあ……そう言って、青年はサッカーボールを差し出す。木陰で膝を抱えて座り込んでいたアルトゥールは、差し出されたボールをじっと見つめていた。

＿＿最初はただの興味本位だった。ただ、安らぎが欲しくて、彼らはなにかに縋りたかったのだろう。谷底のように深く、暗い毎日に『ベルナルド』と名乗った青年が、希望の縄を垂らしてくれたのだ。

『サッカーか！俺初めてやるよ！』

『はしゃいでんじゃねーよ』

工場内にある敷地を借りて、初めてボールと向き合う彼ら。ルシアンは少しでも周りより大人ぶろうとしているのだろうか、口では意地を張っているものの、顔にはミゲルと同じように｢楽しみ｣と書かれている。

＿『お前達はお前達自信で幸せを見つけるんだ』

足元に置かれたサッカーボールを見つめたまま、アルトゥールはベルナルドの言った言葉を思い返す。

……あんなことを言ってくれる人は彼が初めてだったのだ。顔を上げれば、ベルナルドと目が合う。彼は静かに頷いた後、開始するように言い放った。

『いただきだぜ！』

『うわあっ…！とっと』

ボールを蹴り合い、取り合い、パスを繋げる。仲間と協力してゴールへと攻め上がる。

最初こそコントロールが上手くいかず、ボールがラインを超えてしまうこともあったが、雲がかっていた子供たちの顔には、次第に笑顔が溢れていた。