引き金 ページ22
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戦いはさらに、熾烈さを極めていた。相手がどんな手を使って反則プレーを仕掛けているのか見抜けない以上、迂闊に近づくことのできない日本は、ブラジルの凄まじい猛攻の前に為す術がない状況だ。
｢止めるぞ！水神矢、西蔭！｣
｢させねーよ！｣
ゴール前目前の敵から放たれる前に、合体技で追加点を防ぐべく、水神矢らに招集をかける基山。しかし、背後から迫っていたミゲルの存在に気づくことができず 明日人のように動きを封じられてしまう。
｢アルトゥール！｣
ボールは、アルトゥールから前線のルシアンへ。ゴール前には西蔭と、その前に立つ水神矢のみだ。それに加えて、キーパーの西蔭は先程のシュートで片手を負傷している。
｢(まずい……！)｣
嫌な予感が全身を駆け抜けた時には、Aは一目散にゴール前へ駆け出していた。やはり西蔭は右の手の甲を気にしていた。負傷したまま、まともにシュートを食らってしまえば一溜りもないだろう。
｢お願い、間に合って！｣
一刻も早く追いつかなければならない。韓国戦の時に見せた目にも止まらない俊足が、ここに来て再びAに力を貸した。
｢(これなら行ける！)｣
まるで彼女の強い思いに答えるかのように、手首に巻かれていたミサンガは存在を主張するように輝きを強めていく。しかしその現象は、本人のAは愚か、誰一人として気づかないでいた。
『デスサンバ !! 』
再び、ルシアンとアルトゥールの連携技が炸裂。凄まじい勢いでイナズマジャパンゴールへと迫る。
｢はああぁッ!!｣
強烈なシュートを前に、少しでもその威力を殺そうと、水神矢が片足でボールを食い止める。そしてその反対側を、間一髪で追いついたAが援護した。
｢日暮！？｣
｢集中して！少しでも、ここで威力を抑える！｣
突然現れたAに、よそ見をした水神矢だったが、ゴールを守りたい気持ちが同じだということを知ると、足に込める力を振り絞る。
｢全然威力が落ちない…ッ！｣
｢くっ…ここまでか｣
声を張り上げて、ボールを蹴り返そうと軸足に精一杯の力を入れたが、シュートの風圧に押されてしまい、二人の体は意図も簡単にそのまま上空へと持ち上げられて、跳ね飛ばされてしまう。
｢アルテミスリング!!｣
残るは最後の砦、キーパー西蔭だ。魔法陣を展開させ、無数のリングをエネルギー上に発生させる必殺技を繰り出すも、負傷した手が、足を引っ張ることへと繋がり、追加点を許してしまった。
(西蔭くん……)
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作者名：小雪
| 作成日時：2019年9月6日 5時
