サッカー盤 ページ13
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思わぬハプニングがあった日本陣営だったが、何事もなく話の収束はついた模様。西蔭のゴールキックから試合が再開された前半戦であったが、ボールは再び、運悪くアルトゥールへと渡ってしまう。
｢行くぞ！｣
水神矢の掛け声が彼の考案した作戦の合図だった。その一声により、互いにコンタクトを取り合った日本代表選手達は、一斉に駆け上がり陣形を保つ。
｢何人で来ようと、纏めて抜いてやるさ！｣
そう意気込んで、突っ走るアルトゥール。しかし突然、マークしていた小僧丸とヒロトが立ち止まった。二人はそれ以上追いかけようとはしてこない。
｢もうちょっと向こうかよ｣
｢クソ、もう少しだったのに｣
とてもボールを奪いに行く様子ではない彼ら。日本選手達の動きに違和感を感じながらも、アルトゥールはドリブルを続ける。
｢俺のエリアに入ったからにはタダじゃすまさねえぜ！｣
｢ " 俺の " じゃなくて " 俺たち " よ、灰崎くん！｣
次にやってくるは、灰崎とAのツーコンビだ。アルトゥールは、巧みな足さばきで難なく二人を抜き去ると、後ろ目に二人の姿を一瞥した。
｢うーん、惜しい！｣
｢あと少しだったのに｣
追いかけようとしてきた二人であったが、とある場所に差し掛かると、突然急ブレーキをかけるように中途半端な位置で立ち止まった。まるでそこに、見えない線でも引かれているかのように。
｢今度の相手は俺だ！｣
｢何をやってるんだ、こいつら｣
アルトゥールは戸惑う心を隠しきれない。優勢かと思われていたブラジルのこの状況は、日本代表の十中に見事にハマってしまい、思うがままに操られていたのだ。そのことに彼らはまだ気づかない。
｢懐かしいな、あの戦法｣
大きく伸びをしながら、自分の持ち場へと戻る中、少し離れた先を歩く灰崎へと話を振った。
｢帝国戦でお前らが使ってたサッカー盤が、こんな所に来てまで活躍するとは夢にも思わなかったぜ｣
そう言いながら灰崎は、線が引かれている場所を確認するかのように、スパイクで芝生を撫でる。
今の日本は常に隣接するエリアと二面エリアの二名ずつが守っている。他の選手達が動かなくて済む分、体力が温存されるのだ。
なおかつ、フィールドが制限されることで、逆に瞬発力のあるプレーができる。帝国戦で雷門が使った、サッカー盤戦法だと名付けられていた。
(ていうか、灰崎くんがどうして知ってるの？)
(あ？見に行ったからに決まってんだろ)
(帝国戦、来てたんだ)
(…まあな)
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作者名：小雪
| 作成日時：2019年9月6日 5時
