星を超えた想いを36【オリオンの刻印】 (ページ10)

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仕掛けられた罠ページ10

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風丸から野坂へのパスが繋がり、彼は一星をサポートに引き連れて奇を衒った作戦を遂行しようと考え、ロシア陣内へと切り込んでいく。

迫る二人を前に、ユーリを始めとするロシア代表のイレブンバンドに指示内容を知らせる通知が届く。

「野坂と一星を……潰せ」

息を呑んだマリクが、静かな声で呟くと、その指示に目を通した彼らの顔は徐々に強ばり、罪悪感さえ感じる胸の痛みに冷や汗を垂らしながら頷いた。

「一星くん気をつけて、何か来る！」

「先輩？」

野坂からボールを預かり、単身突入を図る一星に、ロシアチームの動きに不穏を感じたAが口元に手を添えて忠告する。

その意味を理解するよりも先に、一星の前に現れた一人の選手が、イレブンバンドから液体を放つ。

「うわぁ…!?」

「い、一星くん！」

突然はられたオイルのぬめりに足を取られ、背中をフィールドに打ち付けた一星。Aがすぐさま駆け寄ろうとするが、それを邪魔せんとばかりにユーリがマークにつく。

「退いて…！」

「……」

「退きなさい！」

マークを振り抜こうと左右に動いてみるものの、その動きに合わせてガードをするユーリ。声を放とうとも彼は一言も話さず、ただ倒れた一星の姿を進退きわまったような悲しげな目つきで見据えていた。

打ち付けた背中に顔を歪めたその隙を逃さまいと、事前に別の方角に立っていた他の選手が一星に向かって再びある物をイレブンバンドから放った。

「危ない!!」

その瞬間を目の当たりにしたAの口から悲痛な声がユーリの後ろから叫ばれる。先程のような液体とは違い、今度は硫酸を含ませたような鋭利な針。

その証拠に、間一髪のところで体を転がして避けた一星の後ろで、刺さった針が溶けていた。当たっていれば一溜りもないだろう。失明しかねないオリオンの汚いやり方に、Aの怒りは心頭する。

「これが……あなた達のやり方なの？」

「…っ」

怒りが頂点に達すると、Aは頭が透きとおってくるようなところがあった。言葉はいっそうなめらかに冷静になっている。

一方、その声を耳元で聞いていたユーリは沈黙を続けて、白い前歯で下唇をなぶるように噛んでいた。自分達がしていることに罪悪感を感じているのだ。

「今度は証拠を残さず、僕達を潰そうというわけか」

一星の無事を確認し、安堵しつつも卑劣な罠を使う手段に走った彼らに警戒を張り巡らせる。そしてロシアはついに四人がかりで野坂を徹底マークした。