星を超えた想いを36【オリオンの刻印】 (ページ8)

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差し伸べる者ページ8

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突然、頭の痛みを訴えはじめたロシアのアース。頭を抱えて呻くその声は日本陣内に響き渡っていた。騒然とする会場、唖然とする仲間達。

「どうしたんだ…」

「なんか、苦しんでるみたいだけど」

「いや、明日人は何かと戦っているんだ」

痛みに耐えかねて、維持していたボールをフィールドの外へクリアしたアースはその場に膝をつく。ただ事ではない様子を対峙していた万作、海腹は懸念する。しかし氷浦はアースの葛藤に気づいていた。

「まさか、明日人くんは…」

「オリオンに洗脳されたのかもしれません」

その異変を察知した野坂と一星もまた、アースの身に起こっていることに勘づいた。

「明日人が洗脳された！？」

「だったら俺たちで、明日人を目覚めさせるんだ」

氷浦の提案に、万作は静かに頷いた。

そしてようやく痛みから開放されたのか、マリクの手を借りてゆっくりと立ち上がったアースに、氷浦がもう一度アースの名を呼び、呼び止める。

「待て明日人！」

「俺たちの声を聞いてくれ！」

背を向けて歩いていくアースに向かって二人が説得をするように何度も声をかけると、その思いが胸を抉るように痛み、脳へと震動するのか、アースは再び頭を押さえて苦悶の唸り声を響かせた。

「明日人！」

「ダメだ！」

再び苦しみはじめたアースの元に、Aの足は引き寄せられるように動く。歩いていた足は近づくにつれて徐々に早まり、あともう少しというところで彼女の手を、野坂が掴んで、とどまらせた。

「離して野坂くん！あのままじゃ明日人が…！」

振り払おうと掴まれた腕を振るうAだが、野坂は何も言わずに掴む手の力を痛まない程度に込める。

「私もそうだったから分かるの！今の明日人は戦ってるんじゃない、怖がってる！」

ここにいる誰よりも、彼女はその苦しみを分かっていた。オーストラリア戦で一星を通して洗脳されていた頃はまだ記憶に新しい。

「誰の言葉を信じたらいいのか分からなくて、きっと混乱してる！だから誰ががここで手を差し伸べなきゃいけないの！でなきゃ、闇に染まっちゃう…」

あの頃は「指示に従わなければならない」という一心で戦っていたが、試合をするうちに仲間の声が聞こえ、混乱状態に陥ったのだ。

「そんなの私が許さない」

壊れそうになった心を救ったのは、他でもないヒロトだった。だが今のアースにはそれがない。

だからこそ、手を差し伸べる者が必要なのだとAは悔しそうに唇を噛み締めて訴えた。