星を超えた想いを36【オリオンの刻印】 (ページ7)

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鷲ページ7

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FFIカザニスタジアムにて、一次グループリーグ最終戦、日本対ロシアの試合がもう間もなく後半戦をむかえようとしている。

そして両チームがポジションにつき、睨み合う中…会場は歓声に包まれながら、キックオフを意味するホイッスルが鳴り響いた。

「もう一点決めて、一気に突き放そう！」

ロシアボールからの後半。FWの小僧丸、アツヤを抜き去ったマリクはドリブルで日本陣内へと切り込みながら、並び走るアースへそう告げた。

「行かせない！」

相槌を打ったアースにパスを回そうとした刹那、それを妨害しに現れたのは日本の日暮。

「君が止めに来るんだね、A」

マリクの意識が仲間から彼女に向けば、Aは一瞬怯んで数歩後ろへ下がった。獲物を狩る鷲のような鋭い眼光を前に、恐る恐る口を開く。

「…っ明日人を返して！」

口から紡がれた言葉はかすかに震えて、自信がなさそうに響いた。この時点でどちらが精神的に優位に立っているのかは明らかだ。

「できない、って言ったらAはどうする？」

ボールを足元で転がしながら肩を竦めたマリクが挑戦的な笑みで聞き返す。苦渋に染ったAの眉間には深い皺が刻まれた。……そして。

「なら力づくで奪い返すまでよ！！」

「おっと」

単身、突撃を図ったAが地を蹴り、猛スピードでマリクへと距離を詰める。思いきった彼女のプレーにマリクは一瞬目を瞬かせたが、すぐさま踵でボールを蹴り上げ、フェイントをかけた。

「そんなDFじゃ僕からボールは奪えないよ」

「くっ…！」

かわした、というよりはAが抜いてしまったという方が正しいのかもしれない。「へへっ…！」と無邪気な顔で鼻の下を人差し指で擦り、ボールをアースへ回したマリク。その様は歳相応の子供だ。

「明日人！」

マリクからパスが通り、日本陣内へと切り込んだアースの前に、氷浦たち伊那国島の者達が彼の目を覚まさせようと進路を塞いだ。

「こんなのってないよ！またみんなと一緒にサッカーしたくて必死に頑張ってきたのに……明日人！」

片足でボールを止め、立ち止まったアースに向かって、真っ先に言葉を発したのはゴールキーパーの海腹だった。

「お前は理由もなく裏切る奴じゃない！何があったんだ、明日人！」

「何か言ってくれ明日人！」

その海腹に続くように、万作、氷浦もアースへ言葉を投げかける。すると彼らの思いと声が響いたのか、突然アースは頭を抱えるように両手で押さえて、苦しそうに呻き始めた。