星を超えた想いを36【オリオンの刻印】 (ページ46)

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革命の狼煙ページ46

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『そのようですね』

さほど興味がなさそうに彼はスルメを噛み砕く。そして、楽しげな顔でサッカーに勤しむ子供達の姿を、酒の入ったひょうたんを片手に見守っていた。

『ですが、私はこれで終わる男ではありませんよ』

『だからこそ私はここに来たのです』

その目は絶望に呑まれてなどいなかった。この男はまだ腹に一物以上のものを抱えている。少なくともオリオンに対して…。新条は、彼の隣に腰を下ろすと同じように前を見据えたまま、ある提案をする。

『私と手を組みませんか？』

某日某所…晴天に恵まれたこの日、オリオン財団を根底から叩くべくして反旗を翻すため立ち上がった者がいた。まるでそれを祝福するかのように、鷹の快活な声が響く。

＿＿＿革命を告げる、狼煙が上がった瞬間だ。

あたりには何の物音もない。のどかで、まるで午睡の時間のようだと彼らは思った。先程辺りを飛んでいた鷹ですらも行方を眩ませている。

人も動物も虫も草木も、何もかもがぐっすりと眠りこんでしまったみたいに静かな午後だった。

｢彼もまた、私と同じオリオンに半期を掲げるものの一人だったのだ｣

太陽が天頂を通過した頃、新条の口から告げられた監督の生い立ちと出会いを真剣な顔で聞いていたAと明日人は、意外だという風に目を丸めていた。

｢監督が……そうだったんですね｣

｢でも、話だけ聞くとなんだか意外かも。……ね？｣

｢だな｣

二人は顔を見合わせて頷き合う。今でこそふくよかな体に見あったほどの心の器が広い人間ではあるが、新条の話を聞くと過去の彼は身なりも酷く、かなりのひねくれ者だったことが窺える。

｢確かにこれだけ長くいたのに、監督の過去については私達も全然知らなかった。あの人、あんまり自分の過去には興味が無いみたいだったから……｣

顎に手を添え、視線をテーブルに落としながらAは彼との記憶を探る。出会ってから半年は経つものの、彼が過去の話を口にしたことなど一度もない。

｢でも…新条さん、監督以外にオリオン財団へ反旗を翻している人はいないんですか？いくら側近のあなたでも、下手に動けば立場が危ういんじゃ……｣

大規模な反乱を起こすにしても、人材が足りなさすぎるとAは踏んだ。顎に添えていた手を離し、紅茶を啜る新条を見つめる。ごくり、と喉を鳴らして飲み干した新条が口を開きかけた＿＿＿その時。

｢仲間なら、ここにもいるよ｣

第三者の声が、ガーデンテラスに響き渡った。