星を超えた想いを36【オリオンの刻印】 (ページ45)

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経営者ページ45

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せっせと忙しく雀が絶間なく鳴いている。方幾里(ほういくり)の空気が一面に蚤に刺されて、いたたまれないような気がする午後十四時。照りつける太陽がガーデンテラスに座る三人を射した。

｢野暮なことを聞いてしまったね｣

｢いえ、気にしないでください。新条さんも私も、思うところがあったのは事実ですから。｣

その中の一人である褐色肌で前髪をM字に分けた男、新条が静かに目を伏せる。こうして面と向かって目の前で黒髪を風に靡かせる少女、Aの気持ちを聞けたことに、安堵していたのだ。

｢これで君たちはオリオンの存在する意義や、その価値も知った。光と影の両面を知ったことになる｣

｢光と影……｣

ぼそりと、明日人が小さな声で復唱した。その隣でAは遠くの空を見つめたまま反応を示さない。両面を知ってしまったからこそ複雑な心境があり、逆に言えば何をすべきなのか見えてきたことになる。

｢でも俺は、サッカーを汚すオリオンのやり方、認めたくないんです｣

膝の上に乗せていた両手に、ぐっと力がはいる。ズボンを巻き込んでできた皺は拳を握りしめるほど広がっていき、今の明日人がどれほどサッカーに対する熱い気持ちが強いのかが伺えた。

｢だからこそ私達は戦っている。多くの協力者と共にね｣

言い終わった直後、遠くの空で鳥の声がした。顔を上げれば、長く伸ばした両翼を微塵も動かさずに、全身をやや斜めにして鷹が大空を舞っていた。

そんな美しい羽根を広げて華麗に飛ぶ鷹を見上げながら、新条は二人に数年前の出来事を語り始める。

＿＿時は遡ること数年前。

ヴァレンティン・ギリカナンが悔やまれながらこの世から去り、当主が、そのご子息であるベルナルド・ギリカナンへと引き継がれたばかりの頃の話。

オリオン財団の経営者が変われど、貧しい子供達が少しでも楽しめるようにとサッカーを与え、そして国に支援を差し伸べると言う志は変わらなかった。

しかしその裏では、財団によって人生を狂わされた者もいる。当時新条は、オリオンに反旗を翻す異分子を取り入れるために、ある男の元へと向かった。

『こんな落ちぶれた男になんの御用ですか？』

『あなたはオリオンに全て奪われた。あなたがオリオンに楯突いたせいだ』

手入れのされていない無精髭を生やし、スルメイカを口の中で音を立てながら食べるやさぐれた男が赴いた新条を一瞥した。後に雷門を勝利へと導き、日本代表の監督に務めることとなる趙金雲だ。