怪訝 ページ5
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後半戦の両チームのポジションが、スクリーンにて公開され始める。ロシアは、前半と同様のアースを中心としたフォーメーションで試合に挑むようだ。
「オールラウンダーだからてっきり スペイン戦みたいにポジションを変えてくると思ったんだけど…」
口を半開きに開けたまま、スクリーンに映るロシア代表選手のフォーメーションを見つめながらAは呟く。
スペイン戦で見せた前半と後半で大幅にポジションを総入れ替えした驚愕は体験しなくて済みそうな反面、やはり気がかりなのはアース選手だ。
「(とは言ったものの…あの選手が明日人なのは確実。あの明日人が自らの意思でオリオンに入ったとは思えない。考えられるのは私の時と同じ洗脳…)」
タッチラインの白線の外側で顎に手を添えながら思考を働かせていると、その横をアースが横切る。
「(もしもそうだとしたら、明日人は…私のせいで)」
顔を上げて視線で追うようにしながら彼の行動に注目してうが、アースを迎え入れるように手招きをするマリクに気が散り、Aは静かに首を振った。
「なに湿っぽい面してやがる」
「…！」
はぁ…と溜息をついたAが腰に手を当て、体を反らして準備体操をしていると頭上から声が降りかかる。そして後ろに反らしていた影響でその人物と見下ろされるような形で目が合ってしまう。
「アイツみたいに叩いてやってもいいぜ？」
「(灰色の髪…？)」
右目が隠れた灰色のロングヘアー。的の様な形状の瞳と視線が絡むと、Aは太陽を背にして顔を覗き込んできたその人物、灰崎の存在を認識すると、張り裂けんばかりに瑠璃色の瞳が大きく見開かれる。
「は、ははは…灰崎く…ッ！？」
「うるせぇ、叫ぶな、危ねーだろ」
「ご、ごめんありがとう…」
危うくバランスを崩して尻もちをすつきそうになったが、またも灰崎が支えたことで助けられた。「ったく…」と背中を押す呆れたその声に、Aは苦い顔を隠せないまま立たせてもらう。
「記憶が戻る前よりバカになってねーか？お前」
「だからバカじゃないってば。前と同じよ」
「そうだな。顔が赤いのは変わんねぇ」
「そ、それは…」
ふにふにの肌を人差し指で頬を真顔でつつく灰崎に痛いところを突かれた挙句、指摘されたことでAの頬はますます熱を帯びた。何より、つつかれている部位に熱が集中してしまうので恥ずかしくなる。
(それは、なんだよ)
(…何でもないわよ)
(あ？言えよ気になるだろうが)
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作者名：小雪
| 作成日時：2019年7月16日 12時
