星を超えた想いを36【オリオンの刻印】 (ページ28)

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危機ページ28

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FFI第四戦、イナズマジャパン対パーフェクトスパークの試合は二対三で終了直前に劇的なゴールを決めたロシアの勝利で幕を下ろした。一次グループリーグ突破の鍵を手に入れたロシアとは裏腹に、日本は厳しい状況下に立たされることとなってしまう。

「オリオンが、ここまで汚い手を打ってくるだなんて…｣

タオルを用意していた杏奈の表情に悲しい影が走る。スタンガンに催涙、催眠ガスを何度も浴びた日本選手は疲労困憊の状態でベンチへ辿り着くと、その場に倒れ込むように膝から崩れ落ちて座っていた。

「ひどい、こんなのサッカーじゃないよ」

座り込む光と氷浦の元へ向かってドリンクを手渡したつくしもまた、今回の試合は見るに堪えない光景であったと話す。ロシアとの戦いを目の当たりにしては、オリオンに嫌悪感を抱くのも無理はない。

「日本は勝ち点四のまま。予選突破できるかどうかは……｣

「アメリカ対スペインの結果次第。最後の最後に来て他力本願となってしまいましたねえ…｣

タブレット端末を手に、同時進行で行われていたスペインとアメリカの試合を中継で見つめながら、析谷が固唾を飲む。その隣では監督が苦々しい表情で
顎髭を弄るように触りながら、話していた。

そんな二人の元に、タオルを首に掛けてドリンクを手に持った野坂が現れる。

｢析谷さん、彼女の容態はどうなんですか｣

彼女…そう言って野坂が視線を向けた先には担架の上で横たわったまま気を失っているAがいた。彼女の周りには心配して集まった仲間達の姿もある。

｢大丈夫……と、言いたいところだけど｣

タブレットの電源を落とし、監督と顔を見合わせた析谷は目を伏せて意味のありげな言葉を漏らした。少なからず、選手達の顔色にも不安の色が現れる。

「頭を強く打ったみたいだから脳に異常がある可能性が高いんだ。念の為、ロシアにある総合病院で検査を受けた方がいいかもしれない｣

｢そうですか…｣

しかし析谷は、まだ何か言いたげな顔をしていた。｢どうかしたんですか｣と野坂が訊ねれば、監督ともう一度顔を見合わせた析谷が恐る恐る口を開く。

｢だけどそうなると……色々と時間もかかるだろう。最悪、検査入院になるとすれば｣

｢日本代表から離脱も考えられるということですね｣

冷静な口調で淡々と言ってのけた野坂に、析谷は決まりが悪そうな顔で致し方ないと頷く。そんな一連の流れを聞いていた者達は、当然のごとく｢離脱｣という言葉にざわめき始める。